無限等比級数とは?基本からわかりやすく解説!

数学 2022.12.14

無限、という概念は数学上、意外に厄介です。文字の意味だけをとらえれば、「限りが無いこと」ということになりますが、数学では1次の無限大、2次の無限大など無限大の程度の違いもあり、実際の取り扱いは文脈によるところが大きでしょう。単に「とても大きい数」という意味で扱うこともあります。無限等比級数は、そんな無限を扱います。この記事では、無限等比級数についてまとめます。

		

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1.  無限等比級数の基礎①等比数列

無限等比級数を扱う前に、数学Bで扱った基礎的な等比数列について復習しておきましょう。

※等比数列に関する記事はこちらからご覧ください。

等比数列とは、文字通り「比が等しい数列」です。

たとえば、以下のような数列 anは等比数列です。

an = 3,6,12,24,48,96,192,………

多くの場合、等比数列を扱う場合には「無限数列」を設定します。

数列には有限数列と無限数列があり、項の個数に限りがあるものを有限数列、項の数に限りが無いものを無限数列といいます。

数列 anの法則はすぐにわかると思います。

前の項に2をかけたら、次の項になっていますね。

 

つまり、「前の項と次の項の比が常に2になっているような数列」なので、等比数列といいます。

このとき、 anは「初項が3で、公比が2であるような等比数列である」といいます。

等比数列を考えるときには、この「初項」と「公比」2つさえわかれば、等比数列がただ一つに定まります。

つまり、その等比数列に関する式を2つたてて、連立方程式を解けば、等比数列の一般項が求まるということになります。

初項が a 、公比が r であるような等比数列 an の一般項は

an =arn-1

です。

2.  無限等比級数の基礎②等比数列の和

数学Bで数列を学習したとき、非常に多くの公式があり苦労したのではないでしょうか。

しかし、数列の公式は(最終的には頭に入れなければなりませんが)、覚えるというより、なぜそうなっているかを理解する方が大切です。

Σを使った和の公式を求めるのは骨が折れますが、その他の数列の公式を導くことは、そう難しくありません。

等比数列の和の公式も、簡単に導くことができます。

等比数列の一般項は

an =arn-1

です。

つまり、等比数列 an n 項目までを書き並べて表すと以下のようになります。

an=a, ar, ar2, ar3, ar4……… arn-1 

等比数列 an n 項目までの和を Snとする

Sn=a + ar + ar2 + ar3 + ar4 +⋯……+ arn-1

となります。この Sn を求めたい!

というわけです。

Snに公比 r をかけます。

rSn=ar + ar2 + ar3 + ar4 + ar5 +⋯……+ arn-1 + arn

ここで、Sn rSn に共通する項が多く見られるのに気づくでしょうか。

Sn-rSnを考えると、真ん中の項がごっそり消えてくれます。

というように計算することで、等比数列の和の公式を求めることができます(ただし公比は1でないとします)。

等比数列の一般項が「rn-1」なのに対して、和の公式で使っているのが「rn」ですので、苦労された方もいるのではないでしょうか。

このような理屈がわかっていれば、迷うことはありません。

等比数列の和の公式を求める際には、「公比 r をかけている」ので、和の公式では rnとなるのです。

等比数列について詳しく知りたい方はこちら!!

 

3.  無限等比級数

ここからは無限級数の説明に入っていきます。

さて等比数列の和では、第1項から第 n 項までの和を考えました。

つまり有限な等比数列の和です。

無限数列の和を「無限級数」といいます。記号を使って表すと、

となります。先の

Sn=a + ar + ar2 + ar3 + ar4 +⋯……+ arn-1

は無限級数の部分和といいます。

 

さて、ここで考えてみましょう。一番初めの数列 an

an = 3,6,12,24,48,96,192,………

の部分和 Snです。

S1=3

S2=3+6=9

S3=3+6+12=21

S4=3+6+12+24=45

このまま続けていくと、どんどん大きな数になっていくはずです。つまり、どこかの値に近づいていくことがありません。

もし部分和が、ある値に限りなく近づいていくことを「収束する」といいます。

収束しないことを「発散する」といいます(発散には広義には振動も含まれます)。

そして、部分和が発散するとき、「無限級数が発散する」といいます。

一部がどんどん大きくなっていくなら、当然全体もどんどん大きくなっていきますよね。

ですから、この無限等比級数は発散します。

では、無限等比級数が収束する場合というのは、どのような場合でしょうか。

結論から言えば、無限等比級数に限らず、無限級数については以下のことがわかっています

 

対偶をとると

                     

となります。

すなわち、無限級数が収束するかどうかは、元の数列 an による、ということです。

ただし                 

ことに気を付けましょう。

無限等比級数に話を戻しましょう。等比数列の和は

 

でした。このとき、元の数列 an が発散するか0に収束するかは、公比 r に依存しているのがわかるでしょうか。

たとえば

an= 3,6,12,24,48,96,192,………

のような、公比が2の等比数列であれば、anは発散しますよね。

一方

のような、公比が 1/2 の数列であれば、元の数列の項はどんどん0に近づいていきます。つまり、an0に収束します。

無限等比級数に限っては、部分和がわかっています。

 

この数式を眺めてみて、収束や発散にかかわりそうな部分はどこでしょう。

rn であることがわかりますか。

もしも rn が発散すれば、Sn全体も発散します。

一方、rnが収束すれば、Snは収束します。

たとえば、rn0に収束すれば、

となり、n に依存しない値になりますね。

では、その rnの収束・発散はどのようにして決まるでしょう。

もちろん、公比 r の値によって決まります。

先も申し上げた通り、公比が2なら発散して、公比が 1/2 なら収束します。

もっと言えば、

① -1 < r < 1 であれば limn→∞rn = 0

② r ≦ -1, 1 < r であれば  limn→∞rn  は発散する

③ r = 1 であれば  limn→∞rn = 1

となりますね。

ではそれぞれの場合 Snはどうなりますか。

①の場合は先にも申し上げました。

です。

 

②の場合

 

から、発散します。

 

③の場合、すなわち r = 1 であれば、数列 an

an  = a, a, a, a, a, a…………

となります。この第 n 項までの部分和 Sn

Sn = na

です。これは n が無限大になれば発散します。

①~③より、無限等比級数の収束・発散に関して以下のことが言えます。

a ≠ 0 のとき、無限等比級数

a+ar+ar2+ ar3+ar4+⋯……+ arn-1+⋯……

の収束発散は、次のようになる

・-1< r <1 のとき、収束して、その和は 、

 である。

・r<-1 ,1<r のとき、発散する。

 

無限級数の性質のまとめ

無限級数の性質として、以下のことを知っておきましょう

 

4.  例題

無限等比級数

が収束するような実数の値の範囲を求めよ。ただし、x ≠ -1 とする。

解答・解説

まず、この無限等比級数のもとになっている数列について考えます。

初項が x、公比が 

の無限等比級数です。

無限等比級数が収束するための条件は、公比が-1から1までの数であることでしたから、求める条件は

から

x<-2, 0<x

となります。

ただし、無限等比級数が収束するための条件は、実はもう一つ隠されています。

それは「初項が0である」ことです。

公比がいくらであっても、初項が0なら、元の数列は0に収束するので、無限等比級数も収束します。

ですから、求める条件は、初項 x = 0 という条件も含めて

x<-2, 0≦x

が答えになります。

この初項の条件を忘れる人が多いので、初項が文字で表されているときには注意しておきましょう。

5.  無限等比級数のまとめ

最後までご覧くださってありがとうございました。この記事では無限等比級数についてまとめました。

無限等比級数は、言葉の定義があいまいな受験生が多いですが、あいまいでもなんとなく解けてしまう分野でもあります。

とはいえ、数学をはじめとする理系分野で重要なのは「定義」です。

しっかり言葉の意味を頭に入れておきましょう。

それさえできていれば、自然と導かれる公式も多いです。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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