極形式とは?複素数の説明から例題まで

数学 2022.12.26

この記事では、極形式について解説します。

高校数学で複素数平面、ガウス平面とも言いますが、数学Ⅲのこの範囲を勉強していると必ず出てくるのが極形式です。

しかしいきなり極形式と言われても、そもそもどんな形かわからない、なんとなくはわかるがはっきりとした意味や使い方はよくわからないという方もいるのではないでしょうか。

ここでは、そんな極形式についてわかりやすく解説していきます。

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1.極形式の基礎①直交座標と極座標

極形式を学ぶ前に、極座標というものを知る必要があります。

下の図を見てください。

今までに学習してきたのは、ある点Aを(a,b)のような2つの実数の成分で表す方法です。この2つの実数の成分で表す座標を直交座標と言います。

一方で極座標というのは、原点Oからある点Aまでの距離rと傾きの角度θという成分を使って(r,θ)と表されるものです。

この違いはとても重要なことなので、まずしっかりと頭に入れてください。

 

さてここで、図をよく見るとあることに気づくでしょう。

実は直交座標の成分と極座標の成分との関係はとても簡単に表せます。
点Bを(0,a)として、直角三角形ABOを作ります。

三角関数を思い出してください。
三角関数の定義より、sinθ=b/r、cosθ=a/rです。
両辺にrを掛けると、b=r・sinθ、a=r・cosθと変形できます。

また三平方の定理から、r=a+bという形が成り立っていることもわかりますね。
このように成分同士の関係というのは意外と簡単に示せるのです。

※三角関数に関する記事についてはこちらからご覧ください。

 

2.極形式の基礎②複素数について

極形式を学ぶにあたり、重要となってくるのが素数平面です。
そして当然ですが複素数平面を理解するには複素数の知識が必要となってきます。

今まで扱ってきた数字は実数というものです。自然数や少数など分数の形で表記できる有理数分数の形では表記できない無限小数である無理数それらをまとめて実数と呼びます。
※実数に関する記事についてはこちらをご覧ください。

そして世の中には、実数のほかに虚数というものがあります。
これは想像上の数のようなもので、虚数単位iというものを使って表されます。
ちなみに、このiは虚数を英語で表した゛imaginary number゛の頭文字です。
5iや -16i、i/3といったものは全て虚数です。
虚数単位iは、i= -1という形で定義されており、2乗して -1になるというのはなかなか難しい概念だと言えます。
想像上の数である虚数を使うと、例えば2次方程式などは解の幅が広がったり、扱いづらい関数を扱いやすくなったりします。

2次方程式 x+2x+4=0 を解いてみます。
2次方程式の解の公式を使えば、x=  -1±√ -3となります。
(※解の公式に関する記事はこちらからご覧ください。)


今までは実数の範囲だったのでこの方程式は解なしとなっていたのですが、虚数を使えばx= -1±√3 iと表すことができます。
今まで解なしとしてきた2次方程式もこれで解けるようになるのです。
そしてこの -1±√3 iのような実数と虚数を合わせたものを複素数と言います。一般に、a,bをある実数とし、a+biの形のものを複素数複素数のうちb=0のものを実数a=0のものを虚数と言います。ちなみに複素数a+biのうちb=0のものが実数でそれ以外の全ての数を虚数とする考え方もあります。

実数や虚数の関係図

 

3.極形式の基礎③複素数と複素数平面の関係

続いて、これも極形式に欠かせない、複素数と複素数平面について見ていきます。

複素数をa+biと表したとき、aを実部と言いbを虚部と言います。
唐突ですが、この実部と虚部を座標の成分と考えてみてください。
すると複素数a+biはある座標平面において点(a,b)と表すことができます。

これはつまり、はっきりとはわからなかった複素数というものがある座標平面では具体的に目で見ることができるようになったということです。
そしてこの座標平面を複素数平面と言います。

複素数平面は、複素平面やガウス平面とも呼ばれ、簡単に言ってしまえば複素数をプロットすることができる座標平面です。一般には、横軸に実部をとる実軸、縦軸に虚部をとる虚軸を持ち、複素数a+biを(a,b)のように点としてプロットできます。複素数を座標平面上にプロットすることで、今まで学習してきたxy座標平面のグラフのように、数字の大きさや関係をわかりやすく扱うことができるということです。

 

4.極形式の作り方

それではいよいよ極形式を説明していきます。

複素数a+biをzとおきます。複素数平面では複素数z=a+biを(a,b)のように表しました。これを極座標(r,θ)で考えてみましょう。すると以下の図のような関係となります。
よく見てください。

冒頭で説明した直交座標の成分と極座標の成分の関係と全く同じですよね?
つまりb=r・sinθ、a=r・cosθの関係が成り立っていると言えます。
冒頭との大きな違いは、座標平面が複素数平面であるということです。
冒頭では(a,b)というのはある点Aを表すだけのものでした。

しかし複素数平面上での(a,b)は、ただ点を表すものではなく複素数を表すものでした。
つまり複素数zは、z= a+bi= r・cosθ+r・sinθ・iと書くことができるのです。
この複素数を極座標成分を使った関係式で表したものを極形式といい、z= r(cosθ+ i・sinθ)などとも書かれます。
このときの角θを偏角と呼びます。

 

5.極形式で重要なド・モアブルの定理

極形式を使うことの大きな利点は回転がわかりやすいということです。

例えば、z= a+biという複素数があったとして、zという複素数を考えてみましょう。
実際に計算をすると、z
= (a+bi)=a+2abi+b・iとなり、i= -1でしたので、z=a – b+2abiとなります。

ではz36はどうなるでしょうか。
このまま素直に掛けていっても計算できなくはないですがとても面倒です。
そこで登場するのが極形式です。

まずはzを考えてみます。z=  r(cosθ+ i・sinθ)であったので、z=r(cosθ+ i・sinθ)となります。
ここで r
は一旦置いておいて(cosθ+ i・sinθ)の値を計算します。
展開すると、cos
θ-sinθ+2i・cosθ・sinθとなります。
加法定理を思い出してください。
(※加法定理に関する記事はこちらからご覧ください。)
cos2θ= cos
θ – sinθ、sin2θ=2・cosθ・sinθでした。

つまりまとめると、z=r(cosθ+ i・sinθ)=r(cos2θ+i・sin2θ)という結果になります。
同様にして計算を進めていくとz
36は、z36=r36(cos36θ+ i・sin36θ)となることがわかります。
一般に、nを整数として、複素数z=  r(cosθ+ i・sinθ)をn回掛けあわせてできた複素数z
は、z=r(cos nθ+i・sin nθ)となることが知られています。

これをド・モアブルの定理と言います。
このように複素数を極形式で表すと、複素数の積を簡単に求めることができるのです。
そしてこの積は、複素数の回転に対応しています。

例えばz=r(cos2θ+i・sin2θ)の偏角は2θで、これはzの偏角θを2回足し合わせたものです。
z
36は36回足し合わせたもので掛けた分だけ複素数が回転していることがわかります。
これは偏角が異なる複素数同士でも同じことが言え、これは加法定理により、複素数を掛けると偏角が足されていくからです。

 

6.極形式の例題

最後に例題を解いてみましょう。

例題

2つの複素数を掛け合わせた複素数Z1・Z2を求めよ。

※以下に回答があります。

 

 

 

 

解答

 

 

また、加法定理より

 

 

となります。

計算すると上記のようになりますが、これがどういうことを示しているのか少し考えてみましょう。

Z1, Z2, Z1・Z2を複素数平面上で見てみると、Z1・Z2の偏角はZ1, Z2の偏角を足し合わせたもの。長さはZ1, Z2の長さを掛け合わせたものになっています。

これより、複素数の掛け算は長さを拡大・縮小させて回転させるもの(道具)だととらえることが出来ます。

 

極形式のまとめ

いかがだったでしょうか。

覚えることが多くて大変に感じるかもしれませんが、ポイントさえ押さえればマスターできる内容です!

この記事をしっかりと読み、理解しながら学習を進めていきましょう。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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