円運動とは?用語や公式まで例題を用いて徹底解説!

物理 2019.12.23
円運動とは?用語や公式まで例題を用いて徹底解説!

身の回りには、円運動している物体が多くあります。
惑星は太陽のまわりを円をえがきながらまわっていますし、観覧車は一定の周期で回っています。
物理では円周上を動くような運動を円運動といい、高校物理の問題としてもよく出題されます。
円運動の問題は、コツをつかめば簡単なのですが、知らないと難しいと感じる受験生が多いようです。
公式として最低限必要なものには(*)を付けましたので、ご確認ください。
この記事では、高校物理の円運動についてまとめます。

    1.【円運動を学習する前に】弧度法

    まずは弧度法についての確認から始めましょう。
    高校で物理や数学を学習するまでは、角度を表すために、60°や45°のような単位を使用していました。
    数学では高校2年生の三角関数を学習するまでは、「°」を使って角度を表現します。
    このような1周を360°とするような角度の表し方を、度数法といいます。
    度数法は日本では多くの人が小学校から使用していますし、単純でわかりやすい角度の表現方法です。
    しかし、物理や数学で角度を扱う際には、弧度法を用いた方が便利です。
    弧度法は、弧の長さで角度を表す方法であり、数学的な円の性質の結びついていますから、そのまま円の半径などの単位と合わせて計算することができます。

    半径1の単位円を考えましょう。
    単位円の一部を切り取った扇形の、弧の長さと中心角の関係に注目します。

    単位円

    中心角を広くとれば、それに対応して弧の長さも長くなります。
    もっといえば、中心角の大きさと弧の長さは比例の関係にあります。
    ですから、単位円における弧の長さを用いて、中心角を表すことができるはずです。
    単位円の半径は1ですから、その円周の長さは 2π ですね。
    この値をそのまま角度に当てはめたのが弧度法における角度の表し方です。

    ここから2π[rad]=360° ⇔ π[rad]=180°が導かれます。
    弧度法の単位はラジアン[rad]ですが、省略して記述することがほとんどです。
    半径rの円について考えると、単位円と合同な図形ですから、角度θ[rad]の扇形の弧の長さlはl=rθとなります。
    このように、もともと弧の長さを表していたθを、角度に流用しているため、半径rのような長さの単位と合わせて計算できるのが、弧度法の強みです。

    弧度法については以下もご覧ください。
    →弧度法について詳しく学習したい方はこちら!

      2.円運動とは?速度と角速度についても解説!

      物体が円周上を運動しているとき、その物体は円運動をしているといいます。
      その運動の速度が一定であるとき、等速円運動といいます。
      円運動している物体の速度は2種類考えることができます。

      1つは、その物体の瞬間の速度です。
      例えば、半径r[m]の円周上を物体が運動しているとき、時間t[s]の間にθ[rad]の回転角分を物体が移動したとします。そのときの弧上の移動距離をl[m]とすると、物体の速さv[m/s]は
      瞬間の速度
      となります。これが物体の瞬間の速度です。

       

      もう一つは、角速度と呼ばれるもので、物体の1秒当たりの回転角を表します。
      角速度は通常ω(オメガ)[rad/s]で表し、
      角速度
      です。これを上の瞬間の速度の式に代入して、

      v=rω (*)

      となります。

      この式は、速度と角速度の公式としてよく使われますので、覚えておいてください。

      3.等速円運動をする物体に働く力とは?

      等速円運動をしている物体に働く力をどのように解釈するかは、その物体の観測者がどこにいるかによって変わります。
      以下の2つの立場です。

      ①静止している観測者で、円運動を外から眺めている
      ②円運動している物体とともに回転している観測者(物体は静止しているように見える)

       

      まず①の立場における物体の運動についてまとめます。

      等速円運動

      等速円運動をする物体は、常にその円の接線方向への速度を持っています。
      接線方向に速度を持っているだけでは、そのまま接線方向に物体が移動するだけです。
      この物体が円運動をするためには、円の中心方向に向かう力が必要です。
      円運動している物体は、円の中心方向に常に一定の大きさの力を受けており、この力と接線方向の速度が合わさることで、円周方向に移動してゆきます。
      この中心方向に向かう力を「向心力」といい、向心力により常に中心方向に加速度を持っています。

      これは運動方程式
      運動方程式
      から読み取れます。

      月が地球の周りをまわる月の円運動なら、向心力は地球と月に働く万有引力です。
      机の上に置いた小球にひもをとりつけ、等速円運動をさせたときの向心力は、ひもが小球を引っ張る張力です。

       

      ②の立場においては、観測者から見て物体は静止しています。
      先の「小球の円運動」を考えるなら、小球にはひもから受ける張力を受けています。
      この張力は円運動の中心に向かって働いていますが、この力だけでは小球は静止しません。
      ②の立場では、向心力と釣り合う「遠心力」が働いていると考え、中心に向かう力と、外に向かう遠心力が釣り合っていると観測します。
      遠心力は、慣性の法則により働く慣性力の一つです。

      ①②どちらの立場においても、円運動の問題では円の中心方向をx軸正方向とすると、考えやすい場合が多いです。特に理由がなければ、円運動の中心方向をx軸正方向としましょう。

        4. 円運動で用いられる周期・回転数・加速度とは?

        周期と回転数

        円運動において、物体が1回転する時間を周期と言い、T[s]で表します。
        1秒間の回転の回数を回転数といい、回転数n[Hz]と周期の間には、
        回転数と周期
        が成立します。

        1秒間に100回転するなら、回転数は100 [ Hz ] であり、1回転には1/100かかります。

        円運動の半径をrとすると、1回転の移動距離は 2πr[m]ですから、瞬間の速度vに対して
        瞬間の速度
        です。角速度ωを用いて表せば、
        角速度用いて
        となります。

         

        等速円運動の加速度

        等速円運動をしている物体には向心力が働き、それにより中心方向に向かって加速度をもちます。
        その加速度を求めましょう。

        等速円運動をする物体が、微小時間 Δt[s]の間に、Δθ だけ回転し、速度が速度から速度2に変化したとします。

        等速円運動加速度

        両者はベクトルの大きさは同じですが、円運動しているので向きが異なります。
        Δtが十分小さい場合、Δθも小さくなりますから、速度のベクトル変化
        ベクトル変化
        は円の中心に向きます。

        扇型

        微小時間に対して上の図の扇形の弧の長さと弦の長さは近似できますから、角速度をωとすると、

        角速度

        となります。

        等速円運動の加速度 加速度 は、

        加速度

        ですから、Δ速度と同じ方向(円の中心方向)を向き、その大きさは
        加速度大きさ
        となります。既に求めたようにv=rωですから、
        加速度公式
        となります。これが、円運動の加速度の公式としてよく使われるものです。

         

        ②の立場において遠心力は、中心方向に向かう力と釣り合っていると言いました。
        小球の質量をmとすると、
        運動方程式
        の力が中心方向にかかり、これと遠心力が釣り合うので、遠心力の大きさは
        遠心力の大きさ
        で表されます。

          5. 円運動に関する例題

          問題

          長さlの糸を点Oで固定し、もう一方の端に質量mの小球をつける。糸をぴんと張って点Oと同じ高さから静かに離したとき、次の問いに答えよ。ただし、重力加速度をgとする。
          (1) 小球が点Oの真下を通過するときの瞬間の速さを求めよ。
          (2) (1)のときの糸の張力を求めよ。

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

          スクロールしたら解答・解説

           

           

           

           

           

           

           

           

           

           

          解答・解説

          円運動でよく用いるのは、上で説明した円運動の運動方程式などの公式と、力学的エネルギー保存の法則です。

          (1)では力学的エネルギー保存の法則を使います。

          例題解説1

          最初の状態では、運動エネルギーは0、位置エネルギーはmgl
          点Oの真下を通過する時点では運動エネルギーは1/2mv^2、位置エネルギーは0であるから

          (1)式

          となります。

           

          (2)では、運動方程式をつくります。

          (2)解説

          注意しなければならないのは、小球が動いているときには、重りは加速度運動をしているため、つりあいの式が使えないということです。
          運動方程式運動方程式は、糸の張力をTとおくと
          (2) 式
          となり、答えは3mgとなります。

            6. 円運動まとめ

            円運動はさまざまな場面で登場します。
            力学の分野だけでなく、電磁気学でも円運動の問題は出題されます。
            例えば一定の磁場の空間に対して、一定の速度で荷電粒子を、磁場に垂直に飛び込ませたとします。
            すると、電荷が受けるローレンツ力が向心力となり、電荷は等速円運動をします。
            詳しくは以下の記事をご覧ください。
            →ローレンツ力を復習したい方はこちら!

            ご参考になれば幸いです。

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            この記事の執筆者

            ニックネーム:受験のミカタ編集部

            「受験のミカタ」は、難関大学在学中の大学生ライターが中心となり運営している「受験応援メディア」です。