摩擦力の公式をマスターしよう!力の合成・分解の解説付き

物理 2022.12.14

今回は、摩擦力の公式の応用版について解説します。
摩擦力に関する問題は、テストでもよく出題されますので是非マスターしてください。

摩擦に関する記事は他にもありますので、そちらもチェックしてくださいね。

→摩擦に関して詳しく勉強したい方はこちら!

→摩擦係数について詳しく勉強したい方はこちら!

		

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1.そもそも摩擦力の公式とは?

摩擦力の公式は

摩擦力F[N]=摩擦係数(μ)×垂直抗力(N)

です。

⇒摩擦係数について詳しく知りたい方はこちら!

⇒垂直抗力について詳しく知りたい方はこちら!

これはつまり、摩擦力(物体を引っ張った時の抵抗)は、摩擦係数(物体の滑りにくさ)と、物の重さ(=垂直抗力)によって決まるということです。

 

また、摩擦力には、静止摩擦力と動摩擦力という2つの種類があります。
しかし、この2つを求める公式は、ほとんど同じものです。

最大静止摩擦力の公式は、以下の通りです。

最大静止摩擦力F[N]=静止摩擦係数(μ)×垂直抗力(N)

⇒摩擦について復習したい方はこちら!

 

動摩擦力の公式は、以下の通りです。

動摩擦力F[N]=動摩擦係数(μ)×垂直抗力(N)

2つの公式は、ほぼ同じということが分かったでしょうか?
求める摩擦力の摩擦係数と垂直抗力を掛けると、摩擦力が求められるということを覚えていてください。

 

2.摩擦力の公式を応用する前に知っておくべき力の合成・分解

(1)力の合成

現実世界では、物体に働く力は一つではないことの方が圧倒的に多いです。
摩擦力の応用問題を解く際にも、外力が一つでないことは多くあります。
物体があらゆる方向からあらゆる大きさの力を受けるときは、その力を一つにまとめた方が考えやすくなります。この一つにまとめた力のことを合力、合力を求めることを力の合成と言います。

では、力の合成のやり方について解説します。
力は基本的にベクトルで表されます。それにより、考え方も数学のベクトルと同じです。

 

①同じ向きに力が働いている場合


このように力が働いている場合は、ただ足し算をするだけです。
2[N]+4[N]=6[N]の力が右方向に働いているということになります。

 

②左右逆向きに力が働いている場合


右方向に6Nの力が、左方向に2Nの力が働いています。
右向きの力の方が大きいので、左向きの2Nの力は打ち消され、もともとなかったかのように考えることができます。
つまり、6[N]-2[N]=4[N]が右方向に働いているということになります。

 

③全く違う向きに力が働いている場合


この場合、同じ向きに力が働いているわけではないので足し算や引き算などだけで考えることはできません。
平行でない方向に働く2つの力の合力は、2つのベクトルを辺とした平行四辺形によって求めることができます。2つのベクトルの始点を合わせて平行四辺形を作成し、その対角線が合力となります。
今回では、ベクトルF1 とベクトルF2を1辺とした平行四辺形を作り、その対角線であるF3が合力となります。

 

(2)力の分解

先ほどは力の合成について解説しましたが、合成の反対に1つの力を2つにすることもあります。これを力の分解と言います。そして、この分解された2力のことを分力と言います。この考え方は、斜め方向に力が働く際に用います。

以下のような斜め方向の力が物体に働いているとします。


まず、ベクトルの始点から分解したい方向の線と平行な線を引きます。
今回は、地面に平行/垂直に分解したら考えやすいのでそのように線を引きます。
そして、ベクトルの始点からその際に書いた線と線の交点までのベクトルを伸ばしたら、分力が完成します。

 

力の合成と力の分解は、比較してみるとわかりやすいですが、実は正反対の手順となっているということも理解しておけば、わかりやすくなると思います。

 

3. 斜面で働く摩擦力を求める時の公式の活用法

ここからは斜面に物体を置いた時の力の働きかたについて解説します。
ここさえマスターできれば、公式も難なく使えるのでしっかり勉強してくださいね。

問題で、よく物体を斜面上に置かれることがありますよね。
平面ではなく斜面になった途端にどうすればいいかわからない!となっている方もいると思うので、丁寧に説明していきます。

まず、何か物を斜面に置いた時を想像してください。
下に滑り落ちて行く物もあれば、その場にとどまる物もありますよね。
この違いは何でしょう?

まず考えるのは、重さや斜面の傾き加減の影響ではないでしょうか。
もちろんその影響なのですが、もっと詳細に説明すると、物体の重さや斜面の傾き加減の影響によって摩擦力が変化し、その摩擦力の大きさによってその場にとどまるか下に滑り落ちるか変わってくるのです。

また、物体が動くときには、
運動方向に働く力>物体がその場に踏みとどまろうとする力
ということが成り立っています。

 

質量m(kg)の物質を、仰角がθのあらい斜面に置いたとし、斜面と物体の動摩擦係数をμ’とします。

斜面上に物を置いた時、その斜面から垂直に垂直抗力が働きます。
重力はどんな時でも真下に働くので、重力の力の成分(向き)は斜面と垂直にはならないことに注意してください。

ここまでは基本ですが、ここからがポイントです。

斜面上の摩擦力に関する問題では、前の項で説明した「重力の分解」という考え方が必要になります。
図からもわかる通り、いくら「重力が地球の中心に向かってかかっている」とは言っても、物体が斜面を通り越して真下に落ちていくということはあり得ません。
そのため、重力は真下に向かってかかっていますが、斜面が邪魔をしているせいで、「物体の運動方向(斜面を滑り降りる方向)」と「運動方向に垂直な方向(斜面に垂直に力がかかる方向)」の二手に分かれてしまう、と考えます。
この処理が、重力の分解です。

重力を物体の運動方向と運動方向に垂直 (斜面に垂直)な方向に分解するとF1とF2が現れます。
F1と重力W 、F2と重力Wのところに、それぞれ角θを含んだ直角三角形が現れることに注目してください。斜面を含むと三角形と、ここで現れた2つの直角三角形と、斜面と重力Wからなる直角三角形は相似となっています。
よって、F1とF2の成分(向き)は、摩擦角θを用いて表すと
F1=Wsinθ  F2=Wcosθ
ということになります。

次に、摩擦力F、垂直抗力Nを見てください。
斜面に置いているので、静止していても動いていても、斜面の運動方向とは逆向きに摩擦力が働きます。
静止している際は、FとF1、NとF2の力がそれぞれ釣り合っているはずなので
F=F1=Wsinθ、 N=F2=Wcosθ
ということになります。

斜面での静止摩擦力

摩擦力[F]=F1=重力[W]sinθ

 

また、もしこの物体が動いていたら、F1>Fになっているということです。

よって、この時物質が動いたとすると、摩擦力FはF=μ’N=μ’Wcosθと表せます。

斜面での動摩擦力

摩擦力[F]=斜面での動摩擦係数[μ’]×垂直抗力[N]
= 斜面での動摩擦係数[μ’]×重力[W]cosθ

 

4. 摩擦力の公式の応用まとめ

ここまで摩擦力の問題で必要な知識などを解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
ベクトルなども入ってきて、文系の生徒にはますます難しくなっていると思いますが、この記事で苦手意識を無くしてください。
他にも摩擦の記事がたくさんあるので、そちらの方も活用してくださいね。

みなさんの苦手意識が少しでもなくなることを願っています。

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この記事の執筆者

ニックネーム:もも

早稲田大学2年
得意教科:数学