摩擦係数とは?摩擦力の求め方を解説!

物理 2024.12.12
摩擦係数とは?摩擦力の求め方を解説!

摩擦の計算はわかりにくい……」という方や、「静止摩擦係数と動摩擦係数ってどう違うの?」と思っている方も多いのではないでしょうか。

摩擦の計算は物理の力学の分野で頻出の分野ですが、摩擦係数の扱い方を覚えることで簡単に問題を解くことができます。

本記事では、摩擦係数の扱い方と問題の解き方について詳しく説明していきます。これを読めば、摩擦係数に関する問題をさっと解けるようになるでしょう。

この記事で分かること
・摩擦係数の基礎を理解できる。
・摩擦係数の違いを覚えられる
・摩擦に関する問題を解けるようになる!
		

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    1.摩擦係数とは?

    まず、摩擦係数について説明する前に、摩擦について再度理解の確認をしておいてください。
    摩擦が理解できていないと、摩擦係数を理解するのは難しくなってきます。
    →摩擦について復習したい人はこちら!

    摩擦の問題を解くとき、公式に「摩擦係数μ」というものが出てきますよね。

    大体の生徒が摩擦係数をどういうものか理解せず、そのまま公式を丸暗記したりしていますが、理解しているのとしていないのでは問題の解きやすさが全く違います。

     

    まず、摩擦係数とは、物体と地面の滑りにくさを表したものです。
    言い換えれば、接触面の状態がどれだけ摩擦力に影響を及ぼすかという指標です。

    ツルツルの氷の上をスケート靴で滑るのと、ざらざらしたアスファルトの上をスニーカーでムリヤリ滑ろうとするのとでは、滑りやすさは全然違いますよね。
    このような接触面の「滑りにくさ」を数値化したものが摩擦係数だと考えてください。

    摩擦係数は、基本的にはμで表します。単位を持たない定数なので注意してください。

     

    また、気を付けるべきポイントとして、問題文での文章表現があります。
    問題文の中で、物体が滑る面を「あらい面」と書かれている場合は、摩擦が起こります。
    しかし「なめらかな面」と書かれている場合は、摩擦がないと考えることとなっています。

    そのため、「なめらかな面」では、摩擦を計算しないと覚えておいてください。

      2. 静止摩擦係数と動摩擦係数

      摩擦係数には「静止摩擦係数」「動摩擦係数」の2種類があります。
      名前の通り、静止摩擦係数は静止摩擦力が働くときに発生し、動摩擦係数は動摩擦力が働くときに発生します。
      もっと詳しく知りたい方は、摩擦力に関する記事をご覧ください。

      →摩擦力に関する記事はこちら!

      摩擦力の公式は摩擦力F[N]=摩擦係数(μ)×垂直抗力(N)

      です。これはつまり、摩擦力(物体を引っ張った時の抵抗)は、摩擦係数(物体の滑りにくさ)と、物の重さ(=垂直抗力)によって決まるということです。

      摩擦係数は大きいほど滑りにくく、小さいほど滑りやすくなるということも覚えておいてください。
      摩擦力は摩擦係数に比例しているので、これに伴い、摩擦力も大きいほど滑りにくく小さいほど滑りやすいです。

      先ほど、摩擦には静止摩擦力と動摩擦力があると述べましたが、
      ・静止摩擦力を計算するときには、摩擦係数(μ)に静止摩擦係数を入れる
      ・動摩擦力を計算するときには、摩擦係数(μ)に動摩擦係数を入れる
      ということになります。

      また、垂直抗力とは、面に接した物体が面を押す力の反作用として面から垂直に受ける力のことです。
      重力と同じであると覚えてください。

      →反作用について復習したい方はこちら!

      そして、摩擦係数は物体の素材などで変化します。
      詳しくは次の項で説明します。

       

      3. 摩擦係数一覧

      摩擦係数は基本的に問題に書かれているか、計算で求めることができるので覚える必要はありません。

      実は、摩擦にはあまりにも多くの要因が絡んでいるのでまだよくわかっていないことも多いのです。
      摩擦係数が特定されるのは理論上の話で、実際はその通りにならないことが多いです。

      例えば、同じスケートリンクでも整備が行き届いていてツルツルな面と、整備が不十分でツルツルではない面では摩擦係数が変わってくるということです。このように、状況によってすぐに変化するので摩擦係数を覚える必要はないのです。

      スケート

       

      しかし、知識として知っておくと問題に出てきたときにイメージしやすいので、余裕のある人は以下の一覧に目を通しておいてください。摩擦係数は、同じ物質でも表面の状態によって差が生じることが多いのですが、一般的に用いられている物質ごとの摩擦係数です。

      金0.54
      銀0.32
      銅 0.46
      マグネシウム 0.34
      アルミニウム 0.82
      鉄 0.52
      (全て鉄と各純物質との摩擦係数)

      金・銀・銅で比べると、金や銅よりも銀の方が滑りやすいことがわかります。
      また、アルミニウムがとても滑りにくいこともわかります。

      ちなみに、何の物質と擦れるかによって摩擦係数は変化します。

       

        4. 摩擦係数に関する練習問題

        これまでに解説した摩擦力の求め方を使って、練習問題を解いてみましょう。

         

        練習問題(1)

        質量 3.0 kgの物体が摩擦のある水平な床の上に置いてあります。
        重力加速度の大きさを 9.8(m/s2) として後の問いに答えなさい。

        (1)物体に床からはたらく垂直抗力の大きさを求めなさい。

        (2)物体に右向きに 6.0Nの力を加えても静止したままであった。このときの静止摩擦力を求めなさい。

        (3)物体が動くには水平に引く力が何 N 必要か求めなさい。静止摩擦係数を 0.50 とする。

        (4)物体が右向きに動き出したあと 8.0Nの力で右に引き続けたときの動摩擦力を求めなさい。動摩擦係数を 0.20 とする。

        (※解答・解説は下へスクロール)

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

        解答・解説

        (1)29.4N

        垂直抗力ですが、鉛直方向のみに物体の重量がかかっているので、重力の作用に対する反作用と考えます。
        N=mg=3.0×9.8=29.4(N)
        この垂直抗力は静止摩擦力にも動摩擦力にも必要となります。

        (2)左向きに6.0N

        物体は静止したままなので最大摩擦力を超えていません。
        最大摩擦力を超えるまでは、引っ張った力の大きさが摩擦力の大きさです。
        ただし、摩擦力は動きを妨げようとするはたらきをするため力を加えた向きと反対になります。

        (3)14.7N

        動き出す直前の摩擦力、つまり最大摩擦力を求めます。
        F0(最大摩擦力) =μ(静止摩擦係数)×N (垂直抗力)なので、
        F0=0.50×29.4=14.7(N)

        (4)左向きに5.9N

        動摩擦力を求めます。
        F′(動摩擦力)  = μ′(動摩擦係数)× N であり、
        動摩擦係数が0.20が与えられているので、
        F′=0.20×29.4=5.88≒5.9(N)

         

        練習問題(2)

        水平な床の上に質量10kgの物体を置き、水平方向に引っ張った。物体と床の静止摩擦係数は0.4、動摩擦係数は0.2である。また、重力加速度は9.8m/s2であるとする。

        (1)引っ張る力の大きさがF[N]になると物体が動き出す。この時のFを求めよ。

        (2)力F’[N]の力で引っ張り続けると、物体は等速直線運動をした。この時の力F’を求めよ。

        (※解答・解説は下へスクロール)

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

         

        解答・解説

        (1)39.2N

        物体は静止摩擦力以上の力で引っ張ると動き出します。
        つまり、この時の大きさFは最大静止摩擦力です。
        よって、静止摩擦係数を用いて
        F=0.4×10×9.8
        F=39.2N

        (2)19.6N

        等速直線運動をしているということは、力F’=動摩擦力であることから
        動摩擦係数を用いて
        F’=0.2×10×9.8
        F’=19.6N

         

        このような問題で注意して欲しいのが
        外力をT、動摩擦力をF’とすると
        一定速度で動いている時はT=F’、加速する時はT>F’、減速する時はT<F’
        となるということです。頻出ですので絶対に覚えておいてください。

         

          5.まとめ

          ここまで摩擦係数を中心に解説していきましたが、いかがだったでしょうか。

          一言で「摩擦」といっても、状況によって力の求め方が異なったり、係数の分類があることがお分かりいただけたでしょうか。
          なんとなくのイメージではなく、説明ができるようになるまで理解することで、試験でのミスを減らすことができます。
          地道なチェックは労力がかかると思いますが、積み重ねが試験では大きな差に繋がります。頑張ってください!

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          この記事の執筆者

          ニックネーム:もも

          早稲田大学2年
          得意教科:数学