【ガウスの法則】電磁気の基本法則を分かりやすく解説!
ガウスの法則は高校物理の電磁気の基本となる法則ですので、しっかりと抑えておく必要があります。
とはいえ電荷、電場など法則の前提となる概念のイメージが難しく、苦手意識を持つ人が多い分野でもあります。
ガウスの法則の前に用語を丁寧に説明していきますので、理解できるまで何度も読み返し、活用してください!
1. 【ガウスの法則の前に①】そもそも電荷や電場とは?
電荷とは、「物体が帯電していること」または「物体に帯電した電気の量」を表す言葉で、「帯電した物体」そのものを示すこともあります。
このように説明すると混乱してしまうかもしれませんが、そもそも、電荷のことを「なんとなく電気を専門的に言った言葉」として認識している人が多く、そのため、「電荷」の意味は文脈によって変わってしまうようなところがあります。
また、電荷がもつ電気の量を、そのまま「電気量」といいます。単位はクーロン[C]を用います。
電荷と電気量も、同じ意味で使われることがあります。以下に、主なニュアンスをまとめたので、混乱気味の人は、参考程度に見ておいてください。
【電荷】
・電気のこと、電気が発生する現象、電気のもとになるもの(=電気)
・電気が物体に帯電していること
・帯電した物体のこと
・帯電した電気、帯電した電気の量(=電気量)
【電気量】
・物体に帯電した電気の量(=電荷)
さて、すべての物体は原子からなっていますが、正の電気を持つ原子核と、負の電気を持つ電子からできている原子は、通常、電気を帯びていません。
しかし、原子が電子を放出したり取り込んだりすると、電子の過不足が生じます。
そして、その物体に電子の過不足を補おうとする力が働き、正や負の電気に帯電するという仕組みです。確認ですが、電子が足りなくなると正(+)に、余ると負(-)に帯電します。
物理でよく出てくる「点電荷」という言葉は、「帯電の大きさが無視できるほど小さい点状の電荷」のことです。
帯電している物体が、実際は大きさを持つモノであっても、理論上「点」として扱うときは「点電荷」とみなします。
例えば、目の前に鉄製の釘があるとして、それが帯電しているとしても、釘のすべての原子から電子が行き来していると考えると、計算がかなり複雑になってしまいます。そのため、物理では、電子が行き来する始点(または終点)となる電荷を1つの点と仮定し、「点電荷」として扱うのです。
また、2つの電荷の間には静電気力が働きます。これは、電子の過不足を補おうとする電荷同士が、お互いに引き合ったり、反発したりするためです。簡単に言うと、磁石のN極とS極のように、違う極同士では引き合い、同じ極同士では反発し合うということです。この電気(プラスとマイナス)バージョンが、静電気力です。
静電気力は、クーロン力とも呼ばれます。
帯電体(電気を帯びた物体のこと)の周りの空間のうち、上下左右、どこであっても、静電気力は力を及ぼします。
別の帯電体を、上下左右のどこから近づけても、電子の行き来が起こるわけです。そのため、物理では、その「空間自体」に他の電荷(ここでは、電気を帯びた物体。帯電体)に力を及ぼす性質があると考えられ、その空間のことを電場といいます。
2. 【ガウスの法則の前に②】電気力線とは?
電気力線とは、電場の様子を視覚的に表したものです。
先ほど説明したように、電荷は周りに静電気力を発して、他の電荷が近づくと影響が及ぶ範囲、つまり電場をつくります。
電場は「ベクトル場」と呼ばれています。ベクトル場とは、空間のすべての点がベクトルを持っている空間です。
x,y,z軸を持つ三次元の空間の、すべての点にベクトルがある様子を想像してみてください。このように、電場の力は、空間内で様々な方向を向いていることが予想されます。
そこで、電場を表現するために、ベクトルの示す方向をつなぎ合わせ、仮想的な線の考え方を取り入れます。これが電気力線です。
電気力線は、実体としてこの世に存在するのではなく、他の物理現象を合理的に説明するために、存在すると仮想して使われています。
電気力線には以下のような特徴があります。
- 電気力線上の各点での接線はその点での電場の向きと一致する
- 電気力線の数が1m^2あたりE本の点では、電場の強さはE[N/C]となる
- 正の電荷から出て負の電荷に向かう
- ある点での電気力線の密度はその点での電場の強さに比例している
- 交わったり折れ曲がったりしない
- 隣り合う電気力線は互いに反発し合う
3. ガウスの法則とは?
電荷と電場、電気力線を理解したところで、ガウスの法則について説明していきます。
ガウスの法則は、電気量と電気力線の数の関係を表していて、「任意の閉曲面の電気力線の本数は、その閉曲面内の電荷量に比例する」という法則です。
任意の閉曲面というのは、言い換えると「どんな形でもよいので、電場ごと、すべての方向から取り囲んだ曲面」のことです。
例えば、点電荷を中心とした球などは閉曲面です。逆に穴の空いた球は閉曲面ではありません。
シャボン玉を想像してください。シャボン玉の表面(シャボン液の部分)は、全く穴が開くことなく、(ほぼ)球体の表面を形作っています。この例では、シャボン玉の表面(シャボン液の部分)を通る電気力線の本数は、シャボン玉の中の空気(閉曲面内)の電荷量に比例する、といえます。
ガウスの法則に戻りましょう。
真空中にQ[C]の正の点電荷を中心とし、半径をr[m] とする球面(閉曲面)を考えます。
先ほど述べたように、1m2の電場の強さは、公式よりであるので、この球面のうち1m2あたりを貫く電気力線の本数はということがわかります。
この球面の表面積は4πr2 [m2]であり、電気力線は点電荷を中心に全方向に伸びていることから、この時の電気力線の本数は、
となります。これは電荷が点電荷でない場合や、点電荷が2個以上の時にも成立します。
ガウスの法則をまとめると、
Q[C]の電荷から出る電気力線の総数は4πkQ本である
ということです。
4. ガウスの法則まとめ
ここまでガウスの法則に関連するものから詳細に解説していきましたがいかがだったでしょうか。テストで出される問題は、このガウスの法則がわかっていることが前提として応用していかなければなりません。
数学的要素が多くて難しいですが、基礎から一つずつ理解して、できる問題を増やしていってください。