アンペールの法則(右ねじの法則)!基本から例題まで
アンペールの法則(右ねじの法則)は、直流電流とそのまわりにできる磁場の関係を表す法則です。
1820年にフランスの物理学者アンドレ=マリ・アンペールが発見しました。
高校物理においては、電磁気学の分野で頻出の法則です。
この記事では、アンペールの法則についてまとめます。
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1.アンペールの法則を知る前に!エルステッドの実験について
アンペールの法則発見の元になったのは、コペンハーゲン大学で教鞭をとっていたエルステッド教授の実験です。
「エルステッドの実験」という名前で有名な実験ですが、行われたのはアンペールの法則発見と同じ1820年のことでした。
エルステッド教授ははじめ、電池につないだ導線を張り、それと垂直になるように磁石を配置して、導線に直流電流を流しました(1820年春)。
ところが、何も起きません。
エルステッド教授の考えでは、直流電流の影響を受けて方位磁石が動くはずだったのです。
そこで今度は、導線と磁石を平行に配置して、直流電流を流したところ、磁石は90°回転しました。
はじめの実験で結果を得られると思っていたエルステッド教授は、納得できなかったに違いありませんが、実験を繰り返して、1820年7月に実験結果をレポートにまとめました。
この実験によって、直流電流が磁針に影響を及ぼすことが発見されたのです。
エルステッドの実験はその後、電磁石や電流計の発明へと結びつき、多くの実験や発見に結びつきました。
2.アンペールの法則
アンドレ=マリ・アンペールは実験により、2本の導線を平行に設置し電流を流したところ、導線間には力が働くことを発見しました。
アンペールは導線に電流を流すと、電流の方向を右ねじの進む方向としたときに右ねじの回る方向に磁場が生じることを発見しました。
これは、電流の流れる方向と右手の親指を一致させたとき、残りの指が曲がる方向に磁場が発生する、と言い換えることができます。
このことから、アンペールの法則は、「右ねじの法則」や「右手の法則」などと呼ばれることもあります。
アンペールの法則は、以下のようなものです。
無限に長い直線導線に直流電流を流したとき、直流電流の周りには磁場ができる。
導線を中心とした同心円状では、磁場の大きさは等しく、磁場の強さH [ N / Wb ] = [ A / m ] 、電流 I [ A ]、導線からの距離 r [ m ] とすると、以下の式が成立する。
2πrH=I
- 例題
水平な南北方向の導線に5π [ A ] の電流を北向きに流すと、導線の真下 5.0cm の距離においた小磁針のN極が、西へtanθ=0.40となるような角度θだけ振れて、静止した。地球の磁場の水平分力(水平磁力)H0 を求めよ。
- 解答・解説
アンペールの法則により、導線を中心とした同心円状に、磁場が形成されます。
その方向は、右手の親指を北方向に向けたときに他の指が曲がる方向です。
磁石は銅線の真下にあるので、磁石には西方向に直流電流による磁場ができます。
問題を見ると「西へ tanθ=0.40となるような角度θだけ振れて静止」しているので、この直流電流による磁場Hと、地球の磁場の水平分力H0 には以下のような関係が成立します。
また、電流が5π [ A ] であり、磁針までの距離は 5.0cm = 0.05m ですので、磁針にかかる磁場Hは
となります。
が答えとなります。
3.アンペールの法則の応用:円形電流がつくる磁場
アンペールの法則と混同されやすい公式に
があります。
これは、半径 r [ m ] の円流電流 I [ A ] がつくる磁場の、円の中心における磁場の強さ H [ A / m ] を表しています。
アンペールの法則と共通しているのは、「電流が磁場をつくる際に、磁場の強さを求めるような法則である」ということです。
アンペールの法則との違いは、導線の形です。
アンペールの法則の導線の形は直線であり、その直線導線を中心とした同心円状に磁場が発生しました。
それにたいして、
は、導線の形が円形に設置されています。
円形に配置された導線の中心部分に、どれだけの磁場が発生するかということを表しているのがこの式です。
例えば、反時計回りに電流が流れている導線を円形に配置したとします。
円の中心を原点におきます。
x軸の正の部分とちょうど重なるところで、局所的な直線の直流電流と考えれば、アンペールの法則から中心部分では下から上向きに磁場が発生します。
y軸方向の正の部分においても、局所的に直線の直流電流と考えて、アンペールの法則から中心部分では、下から上向きに磁場が発生します。
これは、円形電流のどの部分でも同じことが言えますので、この円形電流は中心部分に下から上向きに磁場が発生させることになります。
これらの磁場を合わせると、大きさが
の磁場が発生します。
さらにこれが、N回巻のコイルであるとき、発生する磁場は単純にN倍すればよく、中心部分における磁場は
となります。
4.アンペールの法則の例題
アンペールの法則の例題を一緒にやっていきましょう。
- 例題
x y 平面上の2点、A( -a, 0 ), B( a, 0 ) を通り、x y平面に垂直な2本の長い直線状の導線がL1, L2がある。L1はz軸の正方向へ、L2はz軸の負方向へ同じ大きさの電流Iが流れている。このとき、点P( 0, a ) における磁界の向きと大きさを求めよ。
- 解答・解説
磁界は電流が流れている周りに同心円状に形成されます。
その向きは、右ねじの法則や右手の法則と言われるように、電流の向きと右手の親指の方向を合わせたときに、その他の指が曲がる方向です。
同心円を描いたときに、その同心円の接線の方向に磁界ができます。
ここで重要なのは、(今更ですが)「磁界には向きがある」ということです。
つまり、この問題のように、2つの直線の直流電流があるときには、2つの磁界が重なりますが、その2つの磁界は単純に足せばよいのではなく、ベクトル合成する必要があるということです。
磁界が向きと大きさを持つベクトル量であるためです。
APの距離は√2 a です。
同じくBPの距離も√2 a です。
ですので、それぞれの直流電流がつくる磁界の大きさH1、H2は
となります。
H1の方向は、アンペールの法則から、Aを中心とした同心円上の接線方向、つまりBからPへ向かう方向です。
H2の方向は、アンペールの法則から、Bを中心とした同心円上の接線方向、つまりAからPへ向かう方向です。
H1とH2は垂直に交わり大きさが同じですので、H1とH2の合成ベクトルはy軸の正方向になります。
H1とH2の合成ベクトルをHとすると、Hの大きさは
となります。
以上から
方向:y軸正方向
大きさ:
が答えとなります。
5.おわりに
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、アンペールの法則についてまとめました。
アンペールの法則は、右ねじの法則や右手の法則などの呼び名があり、日本では右ねじの法則とよく呼ばれます。
アンペールの法則で求めた磁界、透磁率を積算した磁束密度、磁束密度に断面積を考えた磁束の数など、この分野では混同しやすい概念が多くあります。
磁場の中を動く自由電子にはローレンツ力が働き、コイルを貫く磁束の量が変われば電磁誘導により誘導起電力が働きます。
磁束密度やローレンツ力について復習したい方は下記の記事を参考にして見てください。
磁束密度がイラストでよくわかる!磁束線や磁束との違いも理解できる!
ローレンツ力を慶應生がイラストで丁寧に解説!円運動との関係も!
それぞれの概念をしっかり理解していないと、電磁気学の問題を解くことは難しいでしょう。
それぞれ、自分で説明できるようになるまで復習しておくことが必要です!