【単振動】グラフから運動方程式まで分かりやすく解説

物理 2018.12.4

「単振動」は、高校で習う物理の中でも難しく、かつ重要な分野です。
ただし、公式である運動方程式をしっかりと頭に入れて、ポイントを押さえておけば、解くのは難しくありません。

力学の中では壁として感じてしまう人も多いですが、波動や電磁気分野にもつながっているため、ここでマスターしておきたいですよね。
特に理系の学生さんからすると、必須の項目でしょう。

今回は、そんな単振動について解説します。

1.単振動の基礎となる等速円運動を押さえよう

単振動の基礎でつまずいてしまう人も少なくありません。
何につまずくのかと言うと、等速円運動が単振動になるという点でしょう。

等速円運動をする物体に光をあてると、後ろに映った影の動きが単振動になるというものです。

ここでつまずいてしまう人は、光と影の動きがイメージしにくいのでしょう。

ただ、実際には、とても簡単な話をしています。
円の中心点に対してX軸とY軸を足してみましょう。
スタートがX軸上にある状態で、反時計回りに等速円運動をする物体をイメージします。

第1象限にある時、物体の影は上へと動きます。
Y軸の頂点に物体がきて、第2象限へと移ると今度は、影は下へと動いていく形です。
続いて第3象限でも下へ、第4象限に入って上へと動きが変化します。
とてもシンプルなものなので、一度イメージができれば問題ないでしょう。

ここで基本を押さえます。
等速円運動の周期をTとして単位はs(秒)です。
次に、角速度はωで、単位はrad/sとします。
さらに回転数をfとして、単位はHz(ヘルツ)、円の半径はRでm(メートル)を単位としてください。

→等速円運動&角速度について復習したい方はこちら!

この時、それぞれの単位は、単振動の単位と対応しています。

単振動1往復の周期もTで単位はs(秒)です。
1秒あたりに動く回転角もωで、rad/sとできます。

回転角は単振動において、角振動数や角周波数とも表記されますが、いずれも同じ意味ですので覚えておきましょう。

また、1秒あたりの往復数にあたるのもfで表記し、この単位はHzですね。
単振動の振幅もRで単位はmと示せます。

ここで注意したいのは、角振動数と振動数の違いです。
角振動数の単位がrad/sになると、振動数はHzとして表されます。
これは1秒ごとに等速円運動をする物体が360°回転するとしたら、1秒ごとに1往復することを意味しているのです。

ちなみに、角振動数がで表記される場合の振動数は、Hzとなります。
つまり、fと同じだと考えて良いでしょう。

2.単振動における重要な式を覚えよう

単振動と密接な関係にあるのが、正弦波です。
この正弦波において重要とされるのがω=2πfという式になります。

この式の他にも、単振動の変位や速度、加速度を覚えておくといいでしょう。
以下に、これら3つを解説していきます。

→三角関数について復習したい方はこちら!

 

単振動の変位

単振動の射影となる直線をx軸として、振動の中心点を(xt)を使って(00)と仮定しておきましょう。

 


この時に、単振動の変位であるx

x = A×sinωt

となります。

単振動の直線であるx軸と、時間経過であるt軸上にグラフを描くと、正弦曲線となります。

これは正弦波のときと同じものなので、この2つは密接な関係にあるといえるでしょう。
このグラフを見るときに大切なのは、横軸になる単位がなにかということです。

 

単振動の速度

単振動の速度であるvは、等速円運動における速さであるを先ほどのx軸にうつしたものですね。


端的にお伝えすると、の値に cosω t をかけると導出できます。

まとめると

v=Aω cosω t

となるので覚えておきましょう。

ちなみに位相で考えてみると、cosωt>0の時は、速度は上向きになっています。
反対にcosω<0である時は、速度が下向きになるのです。
これは縦軸をv、横軸をtとして考えるとわかるでしょう。

 

単振動の加速度

単位振動の加速度であるαの単位はm/s2を考えます。
等速円運動における加速度である2x軸にうつしたもになり、式としては

α=-Aωsinω t

となるのです。

グラフにしてみると、先ほどまでのものとは逆に変位が正の時は、加速度が負になっています。
逆に変位が負になると、加速度が正となっていくのです。
だからこそ、加速度の式は-がつけられています。

この式に単振動変位の式を代入すると

α=-ω2x

という式に変換できます。

既にお気づきかもしれませんが、ここであげた公式は三角関数の微分によって導かれています。

単振動変位の式が x=Asinω t で、これを時間微分すると速度である v=Aω cosω t になります。

さらにこの式を時間微分すると、加速度の式となる α=-Aωsinω t となるのです。

 

ここで単振動を、運動方程式にあてはめてみましょう。

運動方程式はF=mαとなりますから、代入をしてF=m(-ω2x)=-mω2xと変換できます。
ここまで解説してきましたが、単振動の加速度は変位と反対に働きます。
そして、力の大きさは単振動変位の大きさと比例するのです。

このことから、単振動の力は、物体を原点に戻そうとしている(復元力)と考えられます。
逆に、この力が働くことで、物体は単振動すると言い換えてもいいでしょう。

ちなみに、F=-mω2xという式の定数部分、mω2についてはKと置き換えることができるのです。
つまり、F=-Kxですね。
ここで単振動における運動方程式とつながりました。

 

3.単振動の運動方程式にマイナスがつく理由は?

単振動の運動方程式は

mα=-Kx (K=mω2

で示されています。

 

ここで混同しやすいのがフックの法則でしょう。
単振動の問題でバネを用いたものが多いからです。

フックの法則では、F=kxという式を用います。
この2つの式は、同じ記号が含まれていますが、まったく意味が異なります。

単振動の運動方程式に使われるxは、振動の中心点からの位置の変化を意味しています。
そのため、正負の符号があるのですが、フックの法則はそうではありません。

フックの法則は弾性力の大きさを表します。
つまり、使われるxはバネの伸びと縮みとなるので、どちらも正の値のみになるのです。

対して、運動方程式では質量mの物体に対して力が働くと、加速度を生じるのを意味しています。
この2つは似ているようでいて、まったく異なるものだと認識しておいてください。

→フックの法則について復習したい方はこちら!

 

4.単振動の問題を解く時のポイント

単振動の問題で頻出なのが、「バネにつながれた重りを引っ張った時の周期や振動中心を求めよ」というものです。

どの問題もそうですが、問題文をしっかり読むことがポイントになります。
特に、力学の問題は軸を定めなくてはいけません。

問題によっては正の方向など記載されていない時は、自分で必要な情報を決めることが大切です。
一般的な問題では、引っ張る方向を正として、原点は重りの釣り合いの位置としておくといいでしょう。

次に、重りにはどんな力がかかっているのか、すべて書き出していくとわかりやすいです。問題文の内容によって変わりますが、重力がかかるのか、垂直抗力がかかるのか、バネの復元力がかかるのか、などなどを考えましょう。
これらの情報を書き出すことで、単振動の問題はぐっと解きやすくなります。

それから、運動方程式であるmα=-Kxの式を扱いやすいように、α=の形に変えてください。

あとは代入をして計算をしていけば、簡単に解くことができるでしょう。
計算そのものは複雑になることも多いですが、冷静に問題を進めていけば大きなトラブルは起こらないはずです。

 

まとめ

この記事では、単振動における運動方程式と、一般的な解説をしてみました。

高校の物理学では最重要項目の1つですから、特に理系の人はしっかり理解しておきましょう。
数Ⅲの知識が必要となりますが、難関理系大学を目指すなら数Ⅱの時から予習を始めておくことをお勧めします。

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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