数学Bにおけるベクトル方程式の公式と、ベクトルの終点の存在範囲
数学Bで学習するベクトルの単元は、理系でも文系でも、大学受験をするうえで必須の項目です。
文系では少なくともセンター試験で重要な項目として出題されますし、二次試験で数学が必要なら出題される可能性は高いです。
理系なら、センター試験、二次試験のみならず、大学に無事入学出来てからも、線形代数学やベクトル解析の基礎となる範囲です。
ベクトルを使った方程式を、そのまま「ベクトル方程式」と呼びますが、通常の方程式と同様に、それぞれのベクトル方程式はある図形を表します。
この記事では、ベクトル方程式とベクトル方程式の公式についてまとめます。
【目次】
1.公式を学習する前にベクトル方程式を解説
一般的に、平面図形上の直線の方程式は
と表すことができます。y軸に平行でない(傾きが定義できる)直線であれば、
のように表せます。このように、xとyを用いて表された方程式は、その方程式が成立する範囲でxy平面上の図形を表します。
他にも、円の方程式なら
のように表されますね。
これらと同様に、ベクトルを使った方程式を「ベクトル方程式」といい、ベクトル方程式は特定の図形を表すことがあります。
2.直線を表すベクトル方程式の公式
「直線の決定」についてはご存知でしょうか。
平面上には、無数の直線があります。
その無数の直線から、ある一つの直線を決定するには、どうすればよいでしょうか。
この記事では、直線の決定が本題ではありませんから、結論を申し上げますと、
・その直線が通る1点と、直線の傾きが決まれば、直線がただ1つに決まる
・その直線が通る2点が決まれば、直線がただ1つに決まる
です。
これはベクトル方程式における直線でも同様です。
定点A() を通り、
A(
ベクトル方程式で図形を表すときには、軌跡を考えます。
つまり、「その直線上にある点P(
また、
となります。無理やり日本語に直すとしたら、「点Pの位置は(「
このとき、tを「媒介変数」、
では、定点A(
今回は方向ベクトルが与えられていないかわりに、もう一つの点Bがわかっています。
「原点から点Pに向かうには、原点からまず点Aにゆき、方向ベクトルの向きにいくらかすすむ」と考えられます。
このとき、方向ベクトルとして
つまり、
が直線のベクトル方程式ということになります。
tがあらゆる値の実数をとることによって、点Pが直線上を移動し、それによる点Pの軌跡が直線を表します。
公式としてポイントをまとめるなら、以下のようになるでしょう。
・定点A(
・定点A(
と表せる。
3.円を表すベクトル方程式の公式
ベクトル方程式の考え方は、既に申し上げた通りです。
では円のベクトル方程式はどのように考えられるでしょう。
円の定義といえば、
・ある点(円の中心)から一定の距離(半径)にあるような点の軌跡
です。
円の中心を点C(
要は、線分CPの長さが常にrであればよいので、
が成立すればよいことになります。これが円のベクトル方程式です。
4.平面を表すベクトル方程式の公式
ベクトルには非常に大切な性質があります。
線形代数学における線形性に関することですが、詳しくは大学に進学してから勉強します。
知っておくべきことは、
・2本の平行でないベクトル
とすることで、平面上のすべての点Pを表すことができる
ということです。3次元の空間ベクトルなら3本のベクトルで、空間上のすべての点を表すことができます。
例えば、普段から使っている直交座標系もその一つでしょう。
(2, 3)という座標は、原点からx軸方向に2、y軸方向に3だけ進んだ点ですが、
(2,3)=2×(1,0)+3×(0,1)
のように、平行でない2つのベクトル (1, 0) と (0, 1) によって表すことができています。
sとtの値が変化することで、座標平面上のすべての点を表せるはずです。
そしてそれは、2本のベクトルが平行でなければ、どのようなベクトルを選んでも成り立つ性質です。
つまり、平面のベクトル方程式を考えるときには、
とすれば、平面上のすべての点を点Pが表すことになります。
5.ベクトルの終点の存在範囲
平面のベクトル方程式
と、直線のベクトル方程式
(ただしs+t=1)
を見比べてみましょう。どこが違うでしょうか。
平面のベクトル方程式は、sとtの範囲が実数全体であるのに対して、直線のベクトル方程式では、sとtの範囲が限定され、sが決まるとtがただ一つにきまります。
このように、同じように表されているベクトル方程式であっても、変数の範囲に制限が加わることで、点P(
とおくと、
とすることで、①~⑦までのすべての範囲を表すことができます。
とすれば、直線AB上の点を表すことができます。
では、s, tの範囲が
s≧0,t≧0
ならどうでしょうか。sは
あらためてsとtの範囲をみると、両者とも正の数をとりますから、①、②、④、⑤、⑦のような範囲に、点Pを置くことができなくなります。
ですから、
s≧0,t≧0
なら、③、⑥の範囲を表すことになります。
s+t=1
s≧0,t≧0
であれば、線分ABを表します。
また、
s≧0,t≧0s≧0,t≧0,s+t≦1
なら、三角形OABの周および内部を表します。つまり③の範囲です。
本当はこの証明ができた方がよいのですが、まずは、この範囲が三角形の周および内部を表すことを知っておきましょう。
そしてこの「周および内部」という表現も頭の片隅においてください。
6.ベクトルの公式を応用した演習問題
問. 次の問いが表すような図形の方程式を求めよ。
① A( 1,2 )を通り、
② A(3,1 ),B(2,2)を通るような直線
【解答・解説】
①②とも、ベクトル方程式を使わずとも、答えを導くことはできますが、ベクトル方程式を使って解いてみましょう。
① 直線のベクトル方程式は
と表せますから、点Pの座標を ( x, y ) とおくと
ここから媒介変数を消去して、
y=-3x+5
が答えです。
② ①と同様に解きましょう。
が答えです。
問. 基点Oと2点A(
), B( ) について、s≧0,t≧0,s+t=½のとき、
【解答・解説】
「s+t=1」の場合なら簡単ですが、「½」については、どうすればいいでしょうか。
答えは、無理にでも「=1」を作ってしまう、というものです。
つまり、条件から2s+2t=1
とします。こうして2sや2tという文字が現れますから、
のように変形します。こうすると、C(
2s+2t=1
であると考えられます。
よって答えは、「点Pの動く範囲は、線分CDである」となります。
7.ベクトルの公式のまとめ
最後までご覧下さってありがとうございました。
この記事では、ベクトル方程式と、ベクトルの終点の存在範囲についてまとめました。
ご参考になれば幸いです。
⇒ベクトルの基礎についてもう一度学びたいという人は、「数学Bにおけるベクトルの基本とは?成分表示・計算・練習問題も」の記事を読んでください。
⇒ベクトルの公式を使った問題をもっと解きたい方は、「ベクトルを用いた三角形・平行四辺形の面積の公式と求め方」の記事を読んでみてください。
⇒ベクトルについての記事をまとめて見たい方は、「ベクトル関連記事まとめ!〜ベクトル公式からベクトル内積、媒介変数表示〜」の記事を読んでみてください。