熱容量の公式を解説!比熱との関係や熱量保存の法則をまとめて理解しよう
熱容量の公式や熱容量と比熱との関係について解説します。熱力学は熱量・熱容量・比熱など似たような用語が多くて混乱しやすい分野ですが、この記事を通してそれぞれの関係についてまとめて理解できます。さらに、熱容量に関する計算問題を通して理解度を確認できます。
▶比熱とは?例題を用いて比熱を含めた熱力学をマスターしよう
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【目次】
1:熱容量とは?
「物体の温度を1[K]上げるのに必要な熱量」を熱容量と呼びます。容量という言葉は、飲料水のボトル、電池、コンピュータのメモリなどで使われているように、蓄えられる量を指し示しています。そうすると、熱容量は、「物体の温度が1[K]上がった時にその物体に蓄えられる熱量」を示す量だと言うこともできます。
熱量はエネルギーの一形態なので、熱容量の単位は[J/K](ジュール毎ケルビン)となります。
※熱量について「ジュール熱の公式と計算がイラストですぐにわかる!」をご覧ください。
1−1.熱容量の公式と求め方
熱容量C[J/K]の物体に熱量Q[J]が加えられた時、物体の温度が⊿T[K]上がったとしましょう。これを上の説明に従って式で表現すると、次のようになります。
これが熱容量の公式です。物体の温度を⊿T[K]上げるのに必要な熱量がQ[J]であると見ることもできますし、物体の温度が⊿T[K]上がった時に蓄えられる熱量がQ[J]であると見ることもできます。
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2.比熱とは?熱容量と比熱の関係性を解説!
次に比熱について説明します。
熱容量は、同じ物質でできた物体でも、質量によって違います。軽い物体は重い物体に比べて熱容量が小さく、同じ熱量を加えられた時、温度が大きく上がります。
また、熱容量は同じ質量でも、物体を作る物質の種類によって違います。フライパンとこれと同じ質量の水とでは、同じ熱量を加えても温度の上がり方がまったく違い、フライパンの方が熱くなります。物体によって温度の上がり方はそれぞれ違うのです。この違いを表すのが比熱です。比熱は、物体1[g]の温度を1[K]上げるのに必要な熱量です。
このように、熱容量は物体の質量や物質の種類によって変化します。物体の熱容量の違いの要因が質量にあるのか物質の種類にあるのかを知るには、どうすればよいでしょうか。
それには、一定の質量の物体の熱容量を測ります。すると、注目している物体の質量がその何倍であるかがわかれば物体の熱容量がわかます。また、この熱容量に違いがあれば、その原因は物質の違いにあることがわかります。
この一定の質量として1[g]を採用したのが比熱で、いろいろな質量の物体の熱容量を比べる基準になります。比熱は物質1[g]についての熱容量ですから、単位は[(J/K)/g]=[J/(g・K)](ジュール毎グラム毎ケルビン)となります。
したがって、物体の質量をm[g]、比熱をc[J/(g・K)]、熱容量をC[J/K]とすると、次のようになります。
※比熱、温度などの詳しい解説については「比熱とは?例題を用いて比熱を含めた熱力学をマスターしよう」をご覧ください。
2−1.金属物質や水の比熱を確認しよう
比熱は物質の種類によって異なります。アルミニウムや鉄などの金属をはじめとして、多くの物質は水(比熱:4.2[J/(g・K)])よりも比熱が小さくなっています。このことは、金属などが水よりも熱し易く冷め易いことを示しています。
金属の比熱
2-2.熱容量と比熱の関係
熱容量と比熱の関係をまとめておきましょう。
比熱をc[J/(g・K)]、熱容量をC[J/K]とすると、物体の温度を⊿T[K]上げるのに必要な熱量Q[J]は次のようになります。
Q=C⊿T
=mc⊿T
物質の比熱は、加えた熱量と温度変化、そして物体の質量を測定して次の式から求めます。
c=Q/m⊿T
また、比熱と加えた熱量、物体の質量がわかっている時、温度の変化は次のようになります。
⊿T=Q/mc
同じ熱量を加えたり取り除いたりすると、比熱が小さい物質は大きく温度が変化し(熱し易く冷め易く)、比熱が大きい物質は温度変化が緩やかであることがわかります。
なお、容器に入れた水を容器の外から温める時には、容器と水の温度が同時に同じだけ上がります。このようなときには、容器と水を合わせた全体の熱容量を考えるのが便利です。
熱量Q[J]が加えられた時、容器と水の温度が⊿T[K]上がったとしましょう。容器の熱容量をC1[J/K]、水の熱容量をC2[J/K]、それぞれに蓄えられた熱量をQ1[J]、Q2[J]とすると、
Q1=C1⊿T
Q2=C2⊿T
となります。Qを容器と水に振り分けているのですから、
Q=Q1+Q2
が成り立ちます。容器と水を合わせた全体の熱容量をC[J/K]とすると、
Q=C⊿T
ですから、
C⊿T=C1⊿T+C2⊿T
よって
C=C1+C2
となり、全体の熱容量は、各物体の熱容量の和になります。
このことは、3種類以上の物体でも同じように成り立ちます。
3:熱量保存の法則とは?熱伝導・熱平衡について解説!
熱容量は、「物体の温度が1[K]上がった時にその物体に蓄えられる熱量」を示す量と言うことができると説明しました。温度が下がる時には、「物体の温度が1[K]下がった時にその物体から放出される熱量」を示す量と言うことができます。
熱量の正体は、物体を構成する分子や原子などの微小粒子の運動エネルギーです。物体に含まれるこのエネルギーの総和(合計)を内部エネルギーと呼びます。固体では粒子がそれぞれの定位置を中心に振動します。液体や気体では粒子が自由に動き回ります。どの状態でも、温度が高いほどその動きは激しくなり、内部エネルギーすなわち熱量が大きくなります。
さて、外部との熱量の出入りが無いようにして、高温の物体と低温の物体とを接触させてみましょう。すると、動きの激しい粒子から穏やかな粒子へと運動エネルギーが受け渡され、全体で見ると高温の物体から低温の物体へ熱量が移動します。このことを熱が流れると言い、このような仕組みで熱量が移動することを熱伝導と呼びます。温度の差が無くなって熱伝導が止まったとき、その状態を熱平衡と呼びます。
運動エネルギー(力学的エネルギーの一つ)の総和である内部エネルギー、すなわち熱量は保存されます。つまり、高温の物体から失われた熱量と低温の物体が得た熱量とが等しくなります。これを熱量保存の法則と言います。 熱量保存の法則は熱量の合計が不変であることを言っています。
ここで、温度と熱量との違いをはっきりさせておきましょう。温度は粒子の平均運動エネルギーを示し、一つひとつの粒子の運動の激しさの目安です。これに対して熱量は粒子の運動エネルギーの総和、すなわち物体内部の全運動エネルギーを表します。
さて、温度T1[K]、質量m1[g]、比熱c1[J/(g・K)]の高温物体と温度T2[K]、質量m2[g]、比熱c2[J/(g・K)]の低温物体が接触して熱伝導が起こり、熱平衡に達して温度T[K]になったとしましょう。(T1>T>T2) 物体間以外に熱量の移動はないとします。
熱量保存の法則により、高温物体が失った熱量Q1=m1c1(T1−T)[J]と低温物体が得た熱量Q2=m2c2(T−T2)[J]は同じ(Q1=Q2)ですから、次の式が得られます。
m1c1(T1−T)=m2c2(T−T2)
4:熱容量に関する計算問題
熱容量や比熱、熱量保存の法則に関する計算問題を解いてみましょう。
問題
20℃の水2.0[kg]の中に、質量100[g]、温度100℃の石を入れて水をかき混ぜたところ、全体の温度がT℃になりました。石の比熱を0.84[J/(g・K)]、水の比熱を4.2[J/(g・K)]として、次の量を求めてください。
(1)石の熱容量C
(2)石が失った熱量Q(Tを用いて表してください。)
(3)Tの値
解答・解説
(1)比熱は1[g]当たりの熱容量ですから、比熱に質量を掛ければ物体の熱容量になります。
C=mc=0.84×100=84[J/K]
(2)石の温度が水の温度より高いので、石から水に熱量が移動して石の温度は下がります。その変化量(温度差)ΔTは
100−T[K]
ですから、石が失った熱量は、熱容量にこの変化量をかけて
Q= CΔT= 84×(100−T) [J]
となります。
(3)水の温度はT−20[K]上がりますから、水が得た熱量をQ’とすると
Q’= mcΔT=4.2×2000×(T−20) [J]
となります。水の質量をkgからgに直すのを忘れないようにしましょう。熱量保存の法則によりQ=Q’ですから、
84×(100−T)=4.2×2000×(T−20)
が成り立ちます。これを解いて
T=20.8≒21[℃]
まとめ
熱容量C[J/K]は「熱量の容量」と読んで、1[K]の変化で蓄えたり放出したりする熱量を表す物理量として捉えることができます。比熱c[J/(g・K)]は、物質1[g]当たりの熱容量[(J/K)/g]と見るとわかり易いでしょう。m[g]の物体の熱容量を求める時には、熱容量c[J/K]の小物体がm個集まっていると思えばよいのです。
熱量はといえば、物体を構成する粒子の運動エネルギーの総和で、外部との熱の流れが無い限り、全量が保存されます。(熱量保存の法則)
歴史的には、熱を担う熱素という粒子があって、物体が含むその量によって温度が決まるという説がありました。熱の流れや熱の容量という表現の起源がここにあります。しかし、熱素は存在しません。熱の実態は粒子の運動にあることをしっかりと認識しておきましょう。