運動エネルギーとは?公式の導出や仕事との関係を解説!演習問題付き
運動エネルギーとは何か、公式を導出しながら解説します。また、運動エネルギーの変化と仕事との関係についても図と式を用いて解説しています。末尾に演習問題を用意してあり、演習と解説を通して理解を深めることができます。
1.運動エネルギーとは?単位を確認しよう!
1-1.運動エネルギーの公式
2.運動エネルギーの公式を導出してみよう!
3.運動エネルギーの変化と仕事の関係
4.運動エネルギーの公式を使った問題を解いてみよう!
4-1.公式を用いた運動エネルギーの求め方
4-2.仕事と運動エネルギーの関係
5.まとめ
1. 運動エネルギーとは?単位を確認しよう!
物体が他の物体に対して仕事をする能力を「エネルギー」と言います。仕事をしたりされたりすると、それぞれの物体の運動が変わります。
特に、運動する物体は他の物体に接触すると、その物体に力を及ぼして運動を変化させることができるので、この能力を「運動エネルギー」と呼びます。
エネルギーの量はそれによってされる仕事の量で表します。したがって、エネルギーの単位は仕事の単位と同じでジュール[J]です。
運動エネルギーの公式
速さ[m/s]で運動する質量[kg]の物体が持つ運動エネルギーは
です。速さが2乗の形で入っているので、運動の向きには関係がないことがわかります。
なお、運動エネルギーの英語表記は「kinetic energy」なので、運動エネルギーを「K」で表すのが慣例となっています。
図1 運動エネルギーは運動の向きによらない
2. 運動エネルギーの公式を導出してみよう!
他の物体に仕事をする能力が運動エネルギーですから、仕事に伴って運動エネルギーが変化するはずです。運動エネルギーは他の物体に仕事をすると減少し、他の物体から仕事をされると増加します。
まっすぐなレールと静止した客車の模型を用意します。レールの向きに客車を押すと、客車は加速してある速さに達します。このような場面を想像しながら、運動エネルギーの式を導いてみましょう。
質量[kg]の静止している物体に一定の力[N]を加えて力の向きに[m]移動させたところ、速度が[m/s]になったとしましょう。
図2 静止している物体を押して力の向きに動かす
この力がする仕事をWとすると、
W=Fx[J]
です。
一方、この力によって物体に生じる加速度を[m/s2]とすると、運動方程式を用いて力Fを
F=Ma[N]
と書くことができます。
したがって、力Fがする仕事は、
W=Max[J]
となります。
この運動は等加速度直線運動ですから、初速度をV0[m/s]とすると
V2-V02=2ax
の関係が成り立ちます。
(等加速度直線運動の理解に不安がある人は、等加速度直線運動について詳しく解説した記事をご覧ください。)
ここではV0=0[m/s]なので、
V2=2ax
すなわち、
となります。これを力がする仕事の式に入れると
初速度V0=0なのではじめの運動エネルギーが0だったことから、力がした仕事が物体の運動エネルギーに変化したことになります。したがって、運動エネルギーは、
となるのです。
なお、仕事については次の記事を参考にしてください。
3. 運動エネルギーの変化と仕事の関係
今度は、まっすぐなレールを一定の速さで走る客車の模型を用意します。このとき客車には運動エネルギーがあります。
この客車にレールの向きに力を加えると、客車は加速してある速さに達します。速さが変わりますから、運動エネルギーが変化します。このような場面を想像しながら、運動エネルギーの変化と力のする仕事との関係を導いてみましょう。
速度V0[m/s]、質量M[kg]の物体に一定の力F[N]を加えて力の向きにx[m]移動させたところ、速度がV[m/s]になったとしましょう。
図3 運動している物体に力を加えて運動方向の速度を変える
この力がする仕事をW、この力によって物体に生じる加速度をa[m/s2]とすると、運動エネルギーの公式を導いたときと同様に、
W=Fx[J]
F=Ma[N]
と書くことができ、力がする仕事は、
W=Max[J]
となります。
この運動は等加速度直線運動ですから、ここでも
v2-v02=2ax
の関係が成り立ちます。したがって、加速度は
となり、これとW=Maxから
となります。
注意したい点は、仕事には正負があるので運動エネルギーの増加にも正負があることです。
力の向きと運動の向きが同じとき、つまり模型の客車を押すときは、力の向きと移動の向きが同じですから仕事は正になります。このとき運動エネルギーの増加は正で、運動エネルギーは文字通り増加します。よって、
力の向きと運動の向きが逆のとき、つまり模型の客車を押し返すとき、またはブレーキをかけるときは、力の向きと移動の向きが逆なので仕事は負になります。
このとき運動エネルギーの増加は負で、運動エネルギーは減少します。よって、
初速度V0も速度Vも2乗の形で式に入っていますから、運動エネルギーに運動の向きは関係ありません。速さだけが効きます。直線運動であっても円運動であっても速さが同じならば運動エネルギーも同じですし、運動の変化前の速さと変化後の速さがそれぞれ同じならば、どんな向きに運動していても、途中で運動の向きが変わっても、運動エネルギーの変化量は同じです。
また、ここでは力が一定であるとしましたが、力のする仕事が同じならば、途中で力が変化しても結果は変わりません。
このような場合には、F-xグラフを利用して仕事を求めます。図のように、力Fがxに応じて曲線状に変化している場合、Fはxの関数F(x)といえます。ここで、x1からx2の区間におけるF(x)をxで積分することでその区間において力がした仕事を求めることができます。この計算はグラフの下の面積を求めることと同じです。
図4 仕事の計算
4. 運動エネルギーの公式を使った問題を解いてみよう!
運動エネルギーの公式を使ってみましょう。理解を深めるために、どんなことを考えながら公式を導いたかを振り返りながら使ってみてください。
公式を用いた運動エネルギーの求め方
問題
質量9.0×102kgの自動車が南向きに速さ54km/hで走っているときの運動エネルギーK[J]はいくらでしょうか。また、同じ速さで北向きに走っているときはいくらでしょうか。
解答
自動車の質量を9.0×102kg、速さをV=54km/h=15m/sとおくと、運動エネルギーは
となります。向きは関係ありませんから、南向きに走っていても北向きに走っていても運動エネルギーは同じです。
仕事と運動エネルギーの関係
問題
速さ10m/sで進む質量0.20kgの物体を運動の向きに2.0Nの力で15m押し続けました。速さは何m/sになるでしょうか。
解答
V0=10m/s、M=0.20kg、F=2.0N、x=15m、求める速さをV[m/s]とすると、力がする仕事W[J]は
W=Fx=2.0×15=30[J]
となります。両者が等しいので、
30=0.10×V2-10
より
V2=400
よって、
V=20[m/s]
となります。
この問題は、重力加速度をm/s2としたときの自由落下において1s〜2sでの重力のする仕事と運動エネルギーの変化の関係を考えることに相当します。
(注意:運動の向きは運動エネルギーには関係ありませんので、自由落下に限定する必要はありません。)
まとめ
ここでは、運動エネルギーについて次の3つの式を導きました。
仕事と運動エネルギーの関係
速度が2乗の形で入っていますので、運動の向きには関係がないことを押さえておきましょう。
なお、仕事と運動エネルギーの関係の問題で扱った内容は、重力の位置エネルギーとも関連しています。運動エネルギーと位置エネルギーの関係についてはこちらの記事をご覧ください。
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