【体験談】ロンドン大学進学での「ほころびた」生活

合格体験記 2019.8.8

直感のままに憧れのロンドンに大学進学したら、そこはサメ一匹をホルマリン漬けにしたアート作品で有名なダミアン·ハーストが卒業した芸術色の濃い文系大学でした。

この3年間は文化の違い翻弄され、感化されながらたくさん試行錯誤した濃い大学生活でした。

ロンドンで過ごした私の大学生活は、いろいろな意味で「ほころびた」ものだったと感じています。

慣れない生活の中で、縫い目の糸が切れて「ほころびる」ように、気持ちが折れそうになったこと。
そんな中でも努力を重ね、うまくいったときには、桜のつぼみが春に「ほころぶ」るように、嬉しさが込み上げたこと。
たくさんの楽しい仲間にも恵まれて、話しているといつも笑顔がこぼれ、口元が「ほころび」ていたこと。

つらい思い出ももちろんあり、でも今となってはすべていい思い出です。

日本に帰国した今では、大学生活の中で私に起こった変化によって、まるで私の”日本の社会”という糸がほつれてしまってかのような感覚に陥ることもあり、今でも「ほころびる」ように戸惑うことがあります。

しかし、18才の頃から描いていた ”なりたい自分” に近づいているような感覚もあり、また蕾が「ほころぶ」るように新しいスタートに嬉しく感じることも多々あります。

矛盾するようですが、これら丸ごと含めて、ゴールドスミス校に進学してよかったと思います。

 

この記事では、ロンドン大学ゴールドスミス校に進学した筆者の「ほころびた」生活の全容を入学の仕方や学校の特徴、大学生活、卒業後の進路を解説しながら紹介します!

 

どうしてロンドン大学に進学したの?

もともとイギリス音楽の大ファンで、15歳の時にAmy Winehouse に心酔してから、Lily Allen、Eliza Dollittle、Rainy Miloなどのロンドン出身の歌手にどっぷりはまる生活をしていました。

そこから、映画で見る非日常的なヨーロッパの建物や生活リズムのようなものにも興味を持ち、海外住むならヨーロッパがいいなと憧れを抱いていました。

また私は、高校2年生の時にアメリカのケンタッキー州に交換留学生として1年間留学した経験があり、当時から海外の大学に行きたいなという思いもあったと思います。

高校での交換留学後には日本の大学進学の準備もしつつ、次に海外に行くなら絶対にヨーロッパの都市にするという自分の中での強い思いが消せず決心し、高校卒業後、ファンデーションコースを受講しにロンドンに移住しました。

ファンデーションコースについては、海外大学への進学についてまとめた記事や下記で詳しく説明していますので読んでみてください。

 

ロンドンの大学に進学するには

日本での高等学校卒業の学位が最終学歴である人がイギリスの大学に進学する場合、大半の学部課程がファンデーションコースという1年間の大学準備コースを受講することを入学条件としています。

またイギリスの大学入学制度の特徴として、一斉の入試というものはなく、基本的に全て書類審査であることも挙げられます。

これから簡単にファンデーションコースや志願書類について解説します。

 

 

ロンドン大学に入学するのに必須の大学準備コース:ファンデーションコースとは?志願書類でおさえたいポイントって?

基本的に、ファンデーションコースでは学部課程の授業についていくための専門科目やアカデミック英語、エッセイの書き方などの基本的なアカデミックスキルを学びます。

志願する大学の学部によって必要となるファンデーションコースの成績が違うため、志願学部を決めてからそこで必要としている成績を把握することが大切です。

また志願時で必要となる資格や書類は以下の通りです。

 

  • 志願学部が定めている基準点以上のIELTSの取得
  • 高校の成績証明書
  • ファンデーションコースの成績証明書
  • 英文の志望動機

 

志願時にはIELTSの得点とファンデーションコースの成績証明書、英文の志望動機が特に重要です。

そのためファンデーションコースでは志願学部の規定以上の成績を取りながら、IELTSの勉強もすることが必要となってきます。

志望動機は何度も書き直してたくさんの先生や友達に読んでもらい、その学部に行きたい熱意と、その学問を学ぶことで飛躍できるという自分のポテンシャルについて書くといいのではないでしょうか。

 

いざ入学!ロンドン大学ゴールドスミス校とは?

ロンドン大学ゴールドスミス校は2016年度版·世界のアート&デザインスクールランキング5011位にランクインしていることから、日本では美術大学として知られていることが多いです。

しかしロンドン大学ゴールドスミス校は歴史的に学問という枠を超えることを目指した授業内容に力を入れているようにも感じます。

そのせいか、イギリス発祥のカルチュラル·スタディーズという社会科学の分野を作った教授達が教鞭をとっているメディア·コミュニケーション学科では全英で2位、世界で8位にランクインしています。

これからアートや社会科学分野において有名な大学ロンドン大学ゴールドスミス校で学べる学部と専攻を紹介します。

 

ロンドン大学で学べる学部と専攻

ロンドン大学ゴールドスミス校は19学部(法学/人類学/社会/心理/歴史/政治·国際関係/英文·比較文学学科/アート/デザイン/演劇·パフォーマンス学科/音楽/ビジュアルカルチャー学科/メディア·コミュニケーション·カルチャースタディー/商業マネージメント/クリエイティブ·カルチュラル起業/コンピューティング/セラピー·社会福祉/教育)がそれぞれ設置されています。

またイギリスではまだ珍しい、異なった学部同士を学べる専攻や一般とは違ったアプローチで専攻自体を学んでいくことに重きを置いた学科など多彩な専攻が設置されているのも一つの特徴です。

さきほども述べましたが、ファインアートやデザイン、メディア·コミュニケーション学部が特に人気です。

これからそれぞれの有名な卒業生を紹介します。

 

  • ファインアート

 現代美術に強い影響を及ぼした、ホルモン漬けの作品で有名なダミアン·ハースト氏

 2014年にアカデミー賞で初の黒人映画監督で作品賞を受賞したスティーヴ·マックイーン氏 (アメリカの俳優ではありません。)

 

  • デザイン

現代のミニスカートを誕生させたことで有名である、マリー·クワント氏

パンクとイギリスの伝統的なクラシックが融合したスタイルが特徴的なヴィヴィアン·ウェストウッド氏

 

  • メディア·コミュニケーション

リチャード·ホガートやスチュアート·ホール、デヴィッド·モーリーなど、現代カルチュラルスタディーズというメディア系社会学の分野を創った教授達が教鞭をとっています。

 

 

ロンドン大学の授業スタイル

一般的にイギリスの学士課程は3年制で、発表·討論中心のゼミ形式で授業が進められます。

授業は講義とセミナーが毎回セットで、基本的に毎日1つから2つの授業があります。

講義は12時間で、セミナーは1時間です。

セミナーは少人数制なので1クラスに8人前後で行われることが多いです。

セミナーで発言するためにも、講義についていくためにも、毎回の読み物が必須です

 

 

【ロンドン大学】人類学ってどんな学問?

私が学んだのは「人類学」という学問です。

あまり日本ではなじみのない学問ですが、社会学のターゲットをもう少し細くした学問とイメージしてもらうとわかりやすいと思います。

人類学では民族やコミュニティなどの小さいグループが共有している慣習などを研究し、その文化がつくられた原因や根拠を分析していきます。

 

1つの単位は基本的に3ヶ月で修得でき、論文で成績が決まります。

課題で提出するレポートは1500~4000文字ぐらいでした。

ひとつの講義に備えるためには20~60ページほどの読み物が毎回必要だったので、生活と両立させながらやりくりしていました。

 

 

【ロンドン大学の日常】ロンドン内で今一番注目の場所:サウスイースト

10年前のサウスイーストはロンドンの中でも治安の悪い地域でした。

しかしここ最近は、ロンドンの家賃物価が上がり、いろんな人がサウスイーストに住み始めたため、今一番流行っている地域となっています。

ゴールドスミス大学やロンドン芸術大学のキャンパスがあり、美大色の濃い地域であることや、家賃が比較的安いため、もともと若手のアーティストが多く住んでいるという特色もあります。

また、ほかのロンドンの地域より移民も多く文化が豊富で、また観光客も少ないため、ロンドンらしいローカルな雰囲気があることも特徴です。

そのおかげもあり、渋谷の隠れ場カフェのようなオシャレなお店から地元の人がつくる本場のカリビアン料理やタイ料理レストランまで、何でもかんでも詰め込んだようなカオスな地域のように感じます。
 
夜になると若者向けの音楽やファッション系イベントが多く開催されていますので、ロンドンでのユースカルチャーやアンダーグラウンドカルチャーにおいて刺激的でディープなロンドンの地域です。
 

ロンドン大学ゴールドスミス校での大学生ライフ

イギリス人にゴールドスミスの印象について訊くと、「アート大学」や「リベラル」と答える人が多いように思えます。

学校内ではインスタグラムから出てきたような人からロリータ好きの人、典型的なヒップスター、まじめで質素な博士号学生、パジャマのままの学生まで様々な人達が学校に通っています。

学生自治会が大学ランキングのボイコット活動として、学生に毎年行われる大学体験調査に参加しないよう呼びかけたり、イギリスの新聞がゴールドスミス校のデモ活動の様子を報道したりと……

少し変わったロンドン大学ゴールドスミス校での大学生活をこれから紹介します。

▲ファインアート専攻の友人たちの卒業制作の展示会にて

 

【ロンドン大学ゴールドスミス校】とりあえずパブとハウスパーティーと友達のアートイベントとデモと

サウスイースト自体が若者に人気なパブが多いため、年間を通して学校帰りの学生達がパブに集まります。

ゴールドスミスの周りには10個前後のパブがあるため、テスト期間の時はほとんどの学生がテスト後にパブに行き、お店が学生でごった返します。

パブの中にはステージがあるものもいくつかあるので、バンドがパフォーマンスをしたり、学生や地元の人が詩を発表したり、毎日イベントがあります。

このようにコミュニティが強いのがサウスイーストの特徴です。

 

筆者の大学の友達の半数が学校の周りに住んでいたので、週末になるとよく友達のハウスパーティーに行っていました。

また自分がファインアートを専攻しているか、ファインアート専攻の友達がいたら、アート学生はコミュニティ内でのイベントも多いので、ロンドン中のあちこちのイベントを回ったりもできる交友関係の広い毎日でした。

ロンドン自体が東京のように、おもしろいことが毎日どこかで隠れて起きているため、それらを逃すまいと遊び呆けてる学生が多いです。

一夜でイベントをはしごするのも当たり前の体力勝負です。
 
またイギリスの国柄として若者が政治に興味を待ち、自分の意見を表明することに抵抗が少なく、ハードルが低いように感じます。

そのせいか、だいたい1ヶ月に一回は最低でも学校前で生徒がデモを行なっているのを見るのがゴールドスミスの学校の風景の一部だったりします。

 

 

写真のように、よくこの建物にデモのプラカードがかかっています。

興味がある方はイギリスの大手新聞のガーディアンでゴールドスミスが Instititional racism という”制度や組織化された差別” に対して大々的に今年デモ活動をしたことが報道されているので読んでみてください。

 

【ロンドン大学ゴールドスミス校】多様性の中でを見つけ出し続ける日常

ロンドン大学ゴールドスミス校の生徒の20パーセント以上がEU内の学生を含めた外国籍学生で、25パーセントが25才以上です。

また、学生の7割前後が女性で、残りの3割の男性の中の半数前後がヘテロセクシャルではないなど、かなり多様性に富んでいることもゴールドスミスならではの特徴です。

例えば、イギリスの大学では珍しいことではないですが、例えば学校内や図書館にジェンダーニュートラルのトイレがちらほらあります。

 

私が感じたゴールドスミス大学の学生達の雰囲気は、いったん打ち解けられたら素直で器の広く、気さくな学生が多い印象です。

課題や展示会で、常に自分の価値観と向き合わないといけない機会があるからこそ生まれる校風だと思います。

学生達の間では資本主義や性の話から最近やらかした失態まで幅広い話をオープンに話せるような空気が漂っています。

 
また、ロンドン芸大生や他のロンドンの芸大生よりもはるかに服が汚く、見分けがつきやすいのも特徴です。

遊ぶことが好きすぎて、服は基本的に中古の物を着て出費を削る生徒も多いような気がします。

筆者もよく510ポンドのヴィンテージの服を着て、学校帰りにパブで友達と喋ったり、学校内に大きな芝生があるのでそこで友達と和んだりしていました。

▲筆者の大学時代の友人たち

 

【ロンドン大学ゴールドスミス校】 レポート提出日3週間前からは図書館に住む

ロンドン大学では、3年次の1年間に課されたレポートだけで合計8万文字前後書いていたりするほど、課題が重いです。

著者は卒業制作が動画制作だったので、卒業論文を選んだ人は、さらに35万文字前後は多いと思います。

基本的に、大体の学生がレポートの提出3週間前から図書館に居座り、1週間前ぐらいからは深夜3時でも図書館が賑わっています。

アートやパフォーマンス専攻の学生も、他の芸大とは違って、理論を学んで論文を書かないといけない学部が多いため、ゴールドスミス校の学生は、書くことからは逃げられません。

その代わりに、施設は充実していて、図書館は24時間開いているので安心です。

 

 

【ロンドン大学あるある】ボケたらボケ返す!外国人進学生の苦労

ロンドンでの大学生生活は、校内サークルなどではなくナイトライフで交友関係を広げることが多いです。

そのせいか、人との関係が希薄に感じやすかったり、慣れるまで寂しく感じやすかったりする都市のような気がします。

そんな都市に外国籍大学生として文化の違いを感じながら大学生活をするのは、最初はそう簡単なことではないかもしれません。

 

 

例えば、イギリス人は本当によくボケるので、筆者はツッコんだらいいのかなと思い、ツッコんでいたら、なんだか相手の反応が悪ということがありました。

そこで、ボケられたらボケ返してみると、やっと会話がうまくいき始めました。笑

どうも大半のイギリス人は、他人から例えば「子供みたいじゃん!」「生粋のヒップスターだね!」といったツッコミをされ、自分をカテゴライズされるのが苦手だということを友達から聞いて納得!

慣れてからは、毎日が気付きの連続ですが、このように、異文化に溶け込むのは試行錯誤を繰り返さないといけません。

 

友達が作りづらくて苦労している外国籍大学生をよく見かけたので、趣味·興味が似ている人を積極的に作って、イベントやパブに行くことをおすすめします!

▲友人たちと寮にて。

 

【ロンドン大学あるある】メンタルが自然と強くなる?!

ロンドン大学ゴールドスミス校は進歩的な校風のせいか、あるいは私が人類学を学んだせいか、とてもポリティカルかつクリティカルで刺激的な授業内容が多いことも特徴です。

今までの自分の価値観を作り上げてきた自分の環境、性別、階級、人種、年代とつねに向き合い、答えのない質問をつねに自分に投げつずけるような学校生活を過ごしていました。

大学生活では、常に自分の価値観に疑問を持たせるような意見や視野を持つ人と触れ合うことが多いため、自分の意見を持ち、考え続けることに慣れないと、居心地の悪い場かもしれません。

 

 

また、それとは別に、ロンドンという土地は曇りの日が多く、とくに冬は1ヶ月以上太陽を見ないこともあります。

日本でも「5月病」や「梅雨はジメジメして気分がすぐれない」という人が多いように、季節性うつになる人が普通にいます。

筆者の周りでも、イギリス人の友達の誰もが、一度は精神的に挫折することがあるように感じます。

筆者も1年次の春休みは、初めてのテスト期間でのストレスや一緒に住んでいた友達とのいざこざでかるい鬱だったと今は思います。笑

ただ悩んだ分、成長が大きいというのが私のモットーです!

▲友人たちとのハウスパーティーの終盤にて。

 

ロンドン大学に進学したあとの進路

海外大学に進学したら就職活動ってどうするのだろうと思う方が多いのではないでしょうか。これからゴールドスミス生の就職活動について紹介します。

 

【ロンドン大学を卒業して】 大学卒業の傾向

就職活動を大学生の時から真剣に取り組むというのは、日本の大学特有の文化です。

それに対して、ゴールドスミス生は人脈を作るという口実で外に遊びに行きます。

大学卒業の傾向をここでは日本人大学生の場合と、現学生の場合に分けて話したいと思います。

 

  • 日本人大学生の場合

筆者の周りには正直あまり日本人のゴールドスミス生の友達が多くないのですが、私の大学に通った日本人の友達はみんな運よくワーキングホリデーに当たり、イギリスで働いています。

ただこの場合は比較的レアケースです。

ほかのイギリスの大学に進学した日本人の友達は、夏休み中や3年次に就職活動をして日本で就職することを選んでいます。

ロンドンキャリアフォーラムは、残念なことに出展している会社が少ないため、ボストンキャリアフォーラムまで行く人もいます。

海外大学進学生の就活事情と進路についてはこの記事を参照してください。

 

  • 現地大学生の場合

ゴールドスミス生の場合に限らず、イギリスでは1年間のギャップイヤーを過ごしてから大学院に行ったり仕事を始めたりする人が多いみたいです。

ギャップイヤーとは、簡単にいうと卒業後に就職や進学をせず、自由に過ごす期間のことです。

とくに人類学を学んだ学生は修士課程や博士課程に進む人や、メディア·出版企業や企業のマーケティング部門で働くことも多いようです。

 

▲友人たちと展示会にて。

 

さいごに

今回はロンドン大学ゴールドスミス校での体験談外国籍大学生としてのロンドン生活を紹介しました。

若い間に他国の都市に住むということは、とっても刺激的なことです。

この記事を読んで少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。

最後まで読んでくださってありがとうございます!

 

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この記事の執筆者

ニックネーム:受験のミカタ編集部

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