楕円の方程式・面積をマスターしよう!定期テスト1週間前からでも楕円をマスター
楕円とは、よく見るようで、数学的に考えるととても奥の深い図形です。
古代ギリシアの数学者であり天文学者であったアポロニウスは、「円錐曲線論」を著しました。
円錐の切り口を考えることで、放物線、楕円、双曲線、2直線が現れることを述べ、2次曲線の性質を論じたのです。
この「円錐曲線論」は、惑星の軌道に関するケプラーの法則の発見などにも役立ちました。
この記事では、そんな楕円についてまとめます。
1.楕円の基本:二次曲線の定義
まずは、楕円を考える際に基本となる二次曲線について見ていきましょう。
二次曲線で重要なことは多くあります。
例えば、「基本形がわかるか」「平行移動ができるか」「焦点や準線の方程式がわかるか」「グラフが書けるか」などです。
これらのことが頭に入ってようやく初めて、問題に取り組むことができる状態になった、といえます。
そして数学をはじめとする理系教科で何より大切なのが、「定義」です。
では二次曲線の定義を確認しておきましょう。
定義は正確に覚えてください。
【二次曲線の定義】
放物線 :定直線 l と直線上にない定点 A からの距離が等しい点Pの軌跡
楕円 :平面上の2点 F,F’ からの距離の和が一定になるような点Pの軌跡
双曲線 :平面上の2点 F,F’ からの距離の差が一定になるような点Pの軌跡
ほかにも、放物線や楕円、双曲線を表すような表現はあります(円錐曲線など)が、ひとまずこれらを覚えれば問題ありません。
→放物線(二次関数)について詳しく知りたい方はこちら!
→双曲線について詳しく知りたい方はこちら!
2.楕円の方程式
次に、すでに申し上げた楕円の定義から、楕円の方程式(標準形)を導きます。
ここで、みなさん、軌跡の問題の解き方を覚えていますか?
軌跡の問題は
① 求める図形上の点を P (x,y) とおく
② x,y に関する式を立式する
③ ②を解く
の手順で解きましたね。
楕円の方程式も、この順番で求めます。
a>c>0 として、2定点 F( c,0 ),F'( -c ,0 ) からの距離の和が 2a であるような楕円の方程式を求めます。
求める楕円上の点を P (x,y) とおくと、PF+PF’=2a です。点P, F, F’ の座標がわかっているので、これで立式できるはずです。すなわち
です。
ここで両辺を2乗します。
ただし、式変形を行う際には、可逆性がないといけません。
「⇔」があるということは、前の式から後の式、後の式から前の式への双方向への式変形が可能である、ということです。
理系であれば、「式の両辺を2乗するときの、式変形の双方向性」についても気を配れるようになりましょう。
この場合は、2乗による式変形が可能です。
証明はここには載せませんが、興味があれば挑戦してみましょう。
なかなかに難問です。
両辺を再び2乗します。
a2-c2 が重複して出ていますので、これを文字に変えます。
b2=a2-c2 (b>0) とおくと
となり、楕円の標準形を求めることができました。
3.楕円の標準形を見たときに、気づくべきこととは?
上でもとめた楕円は、「2定点 F( c,0 ),F'( -c ,0 ) からの距離の和が 2a であるような楕円」です。
このような2定点を、楕円の焦点といいます。
中心が原点にあり、頂点がそれぞれ軸上にあります。
x 軸上の正の頂点を点A、負の頂点をA’ とおき、y 軸上の正の頂点をB、負の頂点をB’ とおきます。
このとき、線分AA’ を長軸、線分BB’ を短軸といいます。
点A、A’、B、B’ の座標を求めてみましょう。
楕円の方程式を考えるときは、点Pの軌跡を解くことで求めました。
つまり、点Pが楕円上のどこにあっても、焦点F、F’と点Pの間には
FP+FP’=2a
の関係が成立します。
例えば点Pが頂点Aと重なるときについて考えると、
FA+F’A=2a
です。
楕円は長軸、短軸に対して対称な図形ですので、線分FAの長さと線分F’A’の長さは一致します。
すると、FA+F’Aは
⇔F’A’+F’A=2a
⇔AA’=2a
となります。
原点OはAA’ のちょうど中点にあたりますので
OA=OA’=a
が成立します。
つまり、頂点の座標 はA( a,0 ), A'( -a ,0 ) です。
長軸の長さが 2a であることも合わせて言えます。
次に、BとB’ についてです。
点Pがちょうど頂点Bに重なるときのことを考えます。
焦点の座標は、最初に設定した F( c,0 ),F'( -c ,0 ) です。
2焦点からの距離が 2a ですので、
FB+F’B=2a
です。
楕円は軸に対して対称ですので、FB = FB’ となりますから、FB = FB’=a です。
ここで、直角三角形OFBについて注目してください。
OF=c, FB=a であり、楕円の標準形を求めたときに b2=a2-c2 (b>0) と定義しています。
三平方の定理と比較すると OB=b であることが見えるのではないでしょうか。
同様に、OB’=b ですので、B( b,0 ), B'( -b ,0 ) です。
楕円の方程式まとめ
楕円の方程式についてまとめましょう。
a>b>0 のとき、楕円の方程式
について以下のことがわかっていれば問題ありません。
いま、a>b>0 について考えましたが、b>a>0 のときもほとんど同じことが言えます。
ただし、以下の点に注意しましょう。
・長軸がBB’、短軸がAA’ となる
・焦点がy軸上にある(焦点は長軸上にある)
ですので、上と同様の書き方をするなら、以下のようにまとまります。
2定点 F( 0,c ),F'( 0,-c ) からの距離の和が 2b であるような楕円をもとめる、ということになります。
a>b>0 のとき、楕円の方程式
について
4.円と楕円
ここで、楕円と円の関係について考えましょう。
楕円は一般に「円をつぶした形」として認識されています。
例えば、円の方程式、x2+y2=9をy軸方向に 2/3 倍してできる図形について考えましょう。
ここまで見てきた方なら、楕円になりそうだということはわかるでしょう。
また、どんな楕円になるかも見当がつくでしょう。
計算方法は割愛しますが、中心が原点にあり、( 3,0 ),( -3 ,0 ),( 2,0 ),( -2 ,0 ) を4頂点とする楕円です。
この図形は、先の楕円の標準形と照らし合わせると
ということになります。
これを一般化すると、以下のようになります。
円の方程式x2+y2=a2をy軸方向に b/a 倍してできる図形が、楕円
5.楕円の面積
最後に、楕円の面積を求めてみましょう。
円をつぶした形であることから、予想はつくかと思いますが、ここでは積分を使って楕円の面積をもとめます。
楕円の面積を求めるには、楕円の媒介変数表示を用います。
楕円nの媒介変数表示は以下の通りです。
楕円
で表される。
放物線や双曲線については、様々な媒介変数が考えられ、有名なものもいくつかありますが、楕円に関しては、概ねこの媒介変数表示が一般的です。
さて、ここで、先程の
の曲線で囲まれた面積Sを求めましょう。
この楕円の媒介変数表示は
です。
ここで、Sは第一象限の面積を4倍したものと考えられます。
よって、
①の両辺を、θ で微分すると
よって求める面積Sは、x=0 のとき θ=π/2、x=3 のとき θ=0
となります。
半径が3の円の面積は 9π です。
円の方程式 x2+y2=9 に比べて、楕円
は y 軸方向に 2/3 倍した図形ですので、9π×2/3=6π となり、感覚的にも先の答えと一致しますね。
おわりに
最後までご覧くださってありがとうございました。
この記事では、楕円についてまとめました。
惑星の軌道が楕円になるなどのことが一般的に知られていて、物理の世界でも現れる図形です。
大学で学ぶ分野によっては、長い付き合いになるかもしれない図形ですので、しっかり学習しておきましょう。
記事の内容でわからないところ、質問などあればこちらからお気軽にご質問ください。
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