化学電池とは?ボルタ電池・ダニエル電池・燃料電池の仕組みを徹底解説!
化学の分野では、色々な種類の電池が出てきます。
そのため、「覚えるのが大変だ」「計算をどうやったらいいのかわからない」などと思う方もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、高校化学で出てくる電池について丁寧に解説していきたいと思います!
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1.そもそも化学電池とは?
化学電池とは、物質自身が持つ化学的なエネルギーである電気エネルギーを、化学反応によって電力として取り出す装置のことです。
一般的には一次電池と二次電池があります。一次電池はいわば使い捨てタイプの電池で、一度完全に放電するとその後使用できません。しかし二次電池は充電すれば繰り返し使用することができます。私たちが日常生活で使用している電池も化学電池の一つです。
下図で、イオン化傾向がA>Bであったとします。
→イオン化傾向について復習したい人はこちら!
Aの方がイオン化傾向が大きいので、Bよりも先にイオンとなって溶液中に溶け出します。
Aは陽イオンとなって溶液中に溶け出すので、Aの極板にe–も発生します。e–がAの極板に溜まると、導線を通ってBの極板に受け渡されます。すると、溶液中にあったC+という陽イオンと電子が反応します。
このとき、電極Aは最初電子が多くあり、電位が低くなるので負極と呼ばれます。逆に、電極BはAの極板から電子が送られるまで電子が少なく、電位が高いので正極となります。
この時の反応式としては
負極:A → A+ + e–
(A:酸化数0 → A+:酸化数+1 より酸化反応)
正極:c+ + e– → c
(c+:酸化数+1 → c:酸化数0 より還元反応)
となります。
この原理から、今までに様々な電池が開発されてきました。
2.化学の試験に頻出の4種類の電池
以下で、高校化学で頻出の4つの電池(ボルタ電池、ダニエル電池、燃料電池、鉛蓄電池)について、より詳しく解説していきます。
①ボルタ電池
ボルタ電池は、世界で初めて作られた電池として有名です。
銅板と亜鉛版を希硫酸に浸して導線で繋いだもので、最もシンプルな形の電池です。(下図①)
イオン化傾向は、Zn > Cuであるから亜鉛が亜鉛イオンとなって溶け出し、極板に電子が残ります。つまり、亜鉛板は電子を放出するので負極となります。(下図②)
この時負極で起こっている反応は以下のようになります。
Zn → Zn2+ + 2e–
銅板は正極となり、電子は銅板に流れ込みます。流れ込んだ電子はそのままだと不安定であり、Zn2+よりも電子を受け取りやすい、溶液中のH+と反応し、銅板からは水素が発生します。(下図③)
この反応式は以下の通りになります。
2H+ + 2e– → H2
これがボルタ電池の仕組みとなっています。
電池の式は、左側に負極、中央に電解質、右側に正極をそれぞれ化学式を用いて表されるので、ボルタ電池の場合以下のようになります。
(-)Zn|H2SO4aq|Cu(+)
([aq]は水溶液を示しています)
ボルタ電池は世界初の電池ということもあり、欠点もありました。実は時間が経つと電流が流れなくなってしまうのです。この現象を、一般的に分極と言います。
これは、発生した水素が銅板の表面を覆い、新たに銅の極板に近づいた水素イオンが電子と反応することを防いでしまうことになります。
ボルタ電池について、さらに詳しく知りたい方は、ボルタ電池の仕組みに関する記事をご覧ください。
②ダニエル電池
ダニエル電池はボルタ電池の欠点を補うものとして発明されました。初めて実用的に使用できるようになった電池とされています。
亜鉛板と銅板を用いることは同じなのですが、溶液がボルタ電池とは異なります。
ダニエル電池では、亜鉛板を硫酸亜鉛水溶液(ZnSO4)に、銅板を硫酸銅(II)水溶液(CuSO4)に浸しています。(下図①)
2つの溶液は、素焼き板と呼ばれる板で区切られています。そうすることで、2つの溶液が混ざらない仕組みになっています。しかし、素焼き板は穴が無数に空いているので、イオンや分子は移動させることのできる原動力さえあれば、通過することができます。
まず、ボルタ電池と同じでイオン化傾向はZn > Cuであるので、亜鉛板が負極となります。この時負極でおこっている反応は以下の通りです。
Zn → Zn2+ + 2e–
亜鉛が酸化されてイオンとなり、電子を放出しています。亜鉛板に溜まった電子は導線を伝わって銅板に流れ込みます(下図②)。流れ込んだ電子は、電解溶液中の銅イオンと結合し、銅が析出されます。この銅は銅板の表面にくっつきます(下図③)。
この時正極でおこっている反応は以下の通りです。
Cu2+ + 2e– → Cu
この時、電解溶液中の銅イオンが電子と結合したことによって硫酸イオンが余ってしまうことになります。水溶液中では必ず陽イオンと陰イオンの総電荷数は釣り合っていなければなりません。そのため、イオンは素焼き板を通って亜鉛板に移動します(図4)。
この仕組みを用いることによって、分極が起きずに長時間電気を取り出すことができるようになりました。
ダニエル電池について、さらに知りたい方は、ダニエル電池の仕組みについて詳しく解説した記事をご覧ください。
③燃料電池
燃料電池とは、水素や天然ガスなどの燃料と酸素を用いて電気エネルギーを取り出す装置のことです。高校化学では、主にリン酸型燃料電池が用いられます。
まず、左側の極板に水素を放出すると、水素の一部はイオン化し、溶液中に溶け込みます。この時に、極板に電子が与えられるので左側は負極となります(下図②)。
負極でおこっている反応は以下の通りです。
H2 → 2H+ + 2e–
負極に溜まった電子は、導線を通ってもう一方の極板に移ります。こちらは片方が負極とわかっているので正極となります。正極では、放出された酸素が電極から電子を奪い、一度酸素イオンとなりますが、その直後に溶液中の水素イオンと反応して水(H2O)となります(下図③)。
この時正極でおこっている反応は以下の通りです。
O2 + 4H+ + 4e– → 2H2O
余った酸素は外に放出されます。
燃料電池では、水素(燃料、還元剤)と酸素(空気、酸化剤)を供給し続けることができる限り、ずっと電流を取り出すことができます。この燃料電池でおこった正極と負極の反応式をまとめると、以下のようになります。
水しか生成しないので、とても環境に優しいものなのです。クリーンなエネルギー源として、現在は病院やビル、自動車などで実用化されています。
燃料電池についてさらに詳しく知りたい方は、燃料電池の仕組みについての記事をご覧ください。
④鉛蓄電池
鉛蓄電池とは、携帯電話やゲーム機のように、充電をしてなんども繰り返し使うことのできる電池である二次電池の中で、よく使われるものの一つです。
ややこしいので、詳しくは鉛蓄電池についての記事をご覧ください。
3.化学電池まとめ
ここまでややこしい化学電池について詳しく解説しましたが、いかがだったでしょうか。化学電池は模式図までかけるようになる必要があります。
ややこしい範囲ですが、この記事をなんども読み返し、完全に理解できるようになってください。
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